家計資産の有価証券比率が40%の世界とは

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2026年09月07日

  • 調査本部 常務取締役 調査本部長 鈴木 準

前回の筆者本欄(「家計所得の拡大を好循環につなげるには資産形成の高度化と社会保障改革が必要」2026年6月8日(※1))では、家計が所得を得るチャネルとして、雇用者報酬だけでなく、資産所得(利子・配当・キャピタルゲイン)も太くしていくべきであることなどを述べた。その後、7月21日に閣議決定された「日本成長戦略」では、「強い経済」を実現するための分野横断的な課題の一つとして「金融を通じた潜在力の解放」が掲げられ、2040年までに家計金融資産に占める株式・投資信託・債務証券の割合を40%とする目標が示された。

現在、家計金融資産の約半分を占める預貯金は、目下、インフレによって実質的な目減りを続けている。2026年3月時点で20%台半ばの有価証券比率が40%になった世界とは、単に家計がリスク性資産を持つようになるというだけではなく、実体経済の面で家計の貯蓄が産業の設備投資に幅広く回るようになり、生産性の向上によって人々の実質賃金が上昇している姿とワンセットである。行き過ぎた間接金融(預貯金)の肥大が、結果的に金融機関を通じて財政赤字を常態化させ、政府依存の経済になってしまっている現状からの脱却をイメージさせる。

株式は預貯金と比べて長期的にはインフレに対する耐性があり、実質賃金の上昇と資産所得の拡大は消費を活性化させる。また、株価上昇の恩恵が国民の一部にではなく、全体に均霑(きんてん)するようになるだろう。8月21日に公表した当社の日本経済予測(※2)では、株式・投資信託の価格上昇が消費を押し上げる影響(資産効果)が、その保有規模による効果では日本は米国を大きく下回るうえ、1単位の保有による効果でも、米欧を下回っていると分析している。家計の有価証券保有が増え、社会保障制度を担う財政の持続性向上で将来不安が軽減すれば、消費への好影響はより大きくなる。

すでに、そうしたシナリオは着実に進み始めている。総務省「家計調査報告」(2人以上の世帯ベース)によると、2015年に家計の金融資産残高は1,805万円、うち株式・投資信託・債券(株式等)は251万円だったが、10年たった2025年にはそれぞれ2,059万円、435万円となり、株式等が占める割合は13.9%から21.1%へと1.5倍になった。これは所得階層別に見てもおおむね同様である。割合の水準は高所得層ほど高いものの、低所得層を含めてほとんどの所得層が株式等の割合を相当程度高めている。

さらに、年齢層別に見た変化には目を見張る。世帯主年齢20歳代以下、30歳代、40歳代、50歳代で株式等が金融資産残高に占める割合は、それぞれ2015年には2.7%、8.4%、10.3%、10.8%だったが、2025年にはそれぞれ28.3%、27.2%、21.6%、19.7%へと際立って上昇しており、若い世代ほど株式等の割合が高くなる構造に変化している。NISA(少額投資非課税制度)などの制度整備が進み、経済金融教育が広がったことなどを背景に、株式等を組み入れた資産形成はどのような属性・類型の家計でもごく普通のことになってきた。

内閣府「国民生活に関する世論調査」(2025年)によれば、今後の生活が「良くなっていく」と見通しているのは1割に満たず、「同じようなもの」という回答が約6割に達する(「悪くなっていく」が約3割)。調査方法が異なるため単純な比較はできないが、データがある高度成長期の終盤までは「良くなっていく」と「同じようなもの」がそれぞれ3~4割で拮抗していた。その大きさにおいて日本の強みといってよい家計金融資産をどう活用していくかは、「将来に希望がない社会」を「未来への確信を持てる社会」に転換できるかどうかの帰趨(きすう)を決する重要課題だ。

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鈴木 準
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