参議院議員の選挙制度をご存じでしょうか

RSS

2025年07月09日

2025年7月20日に投開票の第27回参議院議員通常選挙に向けて、全国で選挙戦が展開されている。有権者は各政党や候補者の主張する政策を比較し判断して、投票することになるが、そもそもの衆議院・参議院の違いや選挙制度など、投票が国の政治に反映される仕組みについて、意外に詳しく知らない方も多いのではないだろうか。

参議院選挙といっても参議院議員の定数248議席の全部が争われるわけではない。参議院議員の任期は6年で、解散(議員の全てについて、その任期満了前に議員としての身分を失わせること)がなく、3年ごとに半数(124議席)が改選されるのである(※1)。これは、議員の任期が4年であり、解散があるため不定期に行われ、「総選挙」と呼ばれる衆議院議員選挙とは異なる。

日本国憲法の第42条では、「国会は、衆議院及び参議院の両議院でこれを構成する」と定めており、「二院制」を採用している。二院制の目的は、多様な民意を国政に反映させたり、慎重な審議をしたりすることが可能になること、一方の議院の行き過ぎを防ぎ「抑制と均衡」の機能が働くこと、などがある。

こうした二院制の目的を果たすために、両院の選挙制度は異なっており、参議院選挙には、原則として、都道府県単位(鳥取県・島根県、徳島県・高知県はそれぞれ2県の区域)の選挙区制と全国単位の非拘束名簿式比例代表制の二つの仕組みが採用されており、有権者はそれぞれに投票する。選挙区制では、各選挙区から1~6人の議員が選ばれる(※2)。具体的には、候補者名を記載して投票し、得票数の最も多い候補者から当選者が決まる。

これに対して、比例代表制とは、政党の得票数に比例した数の議席数が決まる仕組みである。比例代表制のうち、非拘束名簿式とは、各政党があらかじめ当選者の順位を定めない方式であり、有権者は政党名か候補者個人名に投票できる。ただし、政党が順位を指定できる「特定枠」(優先的に当選人となるべき候補者)も導入されている。

各政党の議席数は、政党の総得票数(政党名の票と候補者名の票の合計)をもとに、ドント方式(得票数を整数1から順に割り、商の大きい方から政党に議席が与えられる)で決められる。各党の当選者は、特定枠を導入していれば、まず、特定枠の候補者から議席が配分され、残りの議席は個人得票の多い順に配分される。

このように、参議院の選挙制度は、複雑な仕組みが採られているが、これは長い歴史の中で議論され、現在の形に至ったものであり、国民の意思をより多角的に国政に反映させる仕組みと考えられている。多くの人々は、通常、このような仕組みを意識していないかもしれないが、投票がどのような制度に基づいて議席に結び付くかを知った上で、納得して投票することも、民主主義を支える有権者にとって、意義があることではないだろうか。

(※1)今回に限り東京都では2022年選出の1人分の欠員補充が行われるため、改選数は125議席。欠員補充分に関しては2028年予定の次回通常選挙も改選対象。
(※2)上記脚注通り、今回に限り東京都では欠員補充が行われるため選出は7人。

このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。

執筆者紹介

金融調査部

金融調査部長 鳥毛 拓馬