歩みを続ける:ジェンダー・ギャップ指数が教えてくれること
2026年09月09日
そう遠くないうちに、今年の「ジェンダー・ギャップ指数」が公表されるだろう。ジェンダー・ギャップ指数とは、世界各国のジェンダー平等の進み具合を評価するもので、2006年以降、世界経済フォーラムが公表している(※1)。今年で20周年を迎えるジェンダー・ギャップ指数はこれまで、日本のジェンダー平等への歩みがいかに停滞しているかを教えてくれてきた。
ジェンダー・ギャップ指数をめぐっては、公表されるたびにメディアで大きく取り上げられるものの、指数の低さよりも順位の低さを強調する報道が目立つ印象があった。しかし、ジェンダー・ギャップ指数が教えてくれることを適切に受け止めるために重要なのは、この指数が何をどのように評価しているのかを理解することだ。最近では、日本初の女性首相の誕生を受け、指数の方法論を踏まえた上で、その影響を独自に試算し、解説を加える記事も出るようになった(※2)。
日本の評価が低い主な要因の1つは、政治分野における女性の過少代表である。日本初の女性首相が誕生したことによる影響が注目されるのもこのためだ。しかし、すでに試算結果が出ているように(※2)、指数に対する影響は限定的なものに留まるだろう。ジェンダー・ギャップ指数が政治分野で評価するのは女性首相の存在だけではない。国会議員や閣僚の女性比率とあわせて、政治における女性の代表性を多角的に評価する。日本でも女性の政治的過少代表の是正に向けた取組みは行われてきたが(※3)、効果はそれほど出ていないと思われる。だが、日本が立ち止まっているあいだに、他の国は着実に歩みを続けてきた。
政治分野におけるジェンダー平等の実現に向けて、歩み続けることの重要性を伝える事例として、イギリスの労働党の取組みが挙げられる。労働党は、特定の選挙区で公認候補者の選考を女性に限定する「All-Women Shortlists」という積極的措置を1993年に導入し、女性議員の増加を後押ししてきた。2024年総選挙で労働党が圧勝したことで、全体の女性議員比率が大きく押し上げられた(※4)。
イギリスは、2024年から2025年にかけてジェンダー・ギャップ指数を大幅に改善させた(※5)。この改善に寄与したのが、政治分野における評価の向上である。政治分野の評価に用いられる3つの変数のうち、「過去50年間の首脳在任期間」は変わらなかったが、「国会議員の女性比率」は40%を超えるまでに上昇し、「閣僚の女性比率」に至っては「完全なジェンダー平等」と定義される50%を達成した。このような改善は、1990年代から続けられてきた女性議員の増加に向けた取組みが、30年の時を経て実を結んだことの表れだ。
ジェンダー・ギャップ指数は、一時的な出来事によって揺れ動くこともあるだろう。しかし、それが教えてくれるのは、長い時間をかけて織り成された社会の変化の一端だ。日本は、依然として根強いジェンダー不平等の構造を解体するために、歩みを続ける必要がある。
(※3)例えば、2018年には「政治分野における男女共同参画の推進に関する法律」(候補者男女均等法)が公布・施行された。2021年には、政党や政治団体に対し、候補者の選定方法の改善など、取組みのさらなる推進を求める内容を含む改正が行われた。
(※4)ただし、2024年総選挙に際して、この措置は使われなかった。
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- 執筆者紹介
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金融調査部
主任研究員 中 澪
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