2022年12月01日
サマリー
◆世界経済フォーラム(WEF)が発表するジェンダー・ギャップ指数(GGI)が注目されている。本稿では、WEFによる指数作成の経緯を把握した後、GGIの方法論を詳細に確認し、この指数がジェンダー平等について考える上で持つ意義と限界を指摘する。そして、GGIを読み解くことを通じて得られた示唆を紹介し、結論に代える。
◆GGIの意義は、量的データに基づいて男女格差を可視化したことで、シンプルなメッセージが伝わる点にあろう。一方、ジェンダーの多様性や格差の多層性を捉えるための重要な視点が取り入れられていない点は、ジェンダー平等を考える上でのGGIの限界として指摘できる。発表から16年が経過し、ジェンダー平等をめぐる論点が複雑化・多様化している中で、議論の変化への対応と、指数の連続性を維持することの妥当性をいかに考えるかがGGIの方法論上の課題となっている。
◆GGIの改善すら見られない日本では、ジェンダー不平等が極めて深刻な状態にあると考えるべきである。日本においては、ジェンダー平等をめぐる状況がいかに停滞しているかを示せるという意味で、GGIは有用であるといえる。ただし、GGIだけが注目されることによって、問題が過度に単純化される危険性が示唆される。総合指数では捉え切れない、さまざまな側面におけるジェンダー不平等を認識する必要がある。
◆政策立案者やメディアなどGGIの利用者にとっては、指数の持つ意義と限界を理解した上で、あくまで1つの参考資料として用いる姿勢が重要である。ジェンダー平等の達成に向けた取組みを推進するためには、量的調査のみならず、質的調査も含めたさまざまな調査・研究の蓄積を踏まえた上での、多角的な検討が求められる。
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