将来の日本における金融業の強者連合とは

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2026年08月17日

将来を見据えると、日本の中で金融業界の強者といえるメガバンクのビジネスモデルも安泰とは言い難い。その背景には、大手携帯キャリアが金融業界に参入していることがある。メガバンクは、金利上昇の局面においてリテール顧客の預金基盤をオンラインチャネル活用により強化している。この結果、モバイル決済とポイント経済圏を強みとする大手携帯キャリアとの主導権争いとなっている。構造的には、「金利回帰+オンライン経済圏競争+DX」が重なって、両者の対抗が生じている。ここでのDXとは大規模な「デジタル・プラットフォーマー化」の意味である。大手携帯キャリアの支配するモバイル決済、ECモールの市場では、大規模なデジタル・プラットフォームほど差別化でき、これらの市場をグリップ(把握・コントロール)しながら、カード決済、銀行、証券などの金融機能を拡充させている。その背景には、「オンライン経済圏」競争の進化がある。楽天グループ、NTTドコモ、KDDI、PayPayなどが「銀行+決済+証券+ポイント」を統合することで、預金は、給与口座・決済口座を銀行に集約して顧客を囲い込む機能へと進化した。これにより、預金(口座)から得られる情報が顧客ライフタイムバリュー(顧客が企業にもたらす利益の総額を示す指標)の中核になってきている。

一方、メガバンクは圧倒的な預金量を持つと同時に、給与口座・法人決済預金など「粘着性の高い預金」、つまり相対的に流出しにくい預金を確保している。課題は、少子高齢化を伴う急速な人口減少により、預金成長が鈍化(貸し出しに対し不足)していることと同時に、店舗・人員をベースとした銀行の構造的なコスト負担が大きいことである。

ただし、大手携帯キャリアはDXで優位に立つが、銀行のような粘着性の高い顧客基盤が弱く、メガバンクは粘着性の高い顧客基盤が強固であるが、DXに弱い。10年後を見据えれば、メガバンクはレッドオーシャンで競争して消耗するよりも、大手携帯キャリアと連携して補完し、選択することも想定されよう。これによって日本特有の新たな事業モデルが生まれる可能性がある。現在でもメガバンクの「DX」と大手携帯キャリアの「オンライン経済圏」の連携(※1)が進んでいる。日本における金融業の強者連合は、この両者の連携から生まれる可能性が高いといえよう。

この強者連合でも安泰とはいえないかもしれない理由が、最近の大きなデジタル技術革新である。例えば、米AnthropicのClaude Mythosに代表される最上位AIモデルの登場は、世界の金融サービスや金融業の在り方を非連続的に変化させつつある。生成AI、サイバーセキュリティー、クラウド、トークン化(現実の資産や権利をデジタルな証明書(トークン)に変換すること)、耐量子計算機暗号やポスト量子暗号などを巡る、刻一刻と変化する新たな動きは、世界の金融経済に大きな事業機会と事業リスクをもたらしているといえ、たとえ前述の強者連合でもコントロールができない領域となっている。さらに、これらの新しい技術を用いた金融サービス、金融業における活用の可能性や金融安定面の含意について、グローバルに議論するステージとなっている。

そもそも自動化が進む日本の金融業界では、労働力が供給制約となっており、事業を継続・拡大していく上で、デジタル技術を活用した労働生産性の向上が喫緊の課題となっているが、そのためには資本規制のある金融業のみの設備投資では限界がある。日本においても、米国と同様に上記のメガバンク×大手携帯キャリアの連携あるいは統合によって「業界全体のオペレーティングモデルをシフトさせるような金融プラットフォーマーの存在感」(※2)を高めていく必要があろう。

(※1)例えばSMBC×PayPay、MUFG×KDDI、楽天グループ×みずほFG、が挙げられる。これらは「トランザクションバンキング化」によって、決済・給与のメイン口座、メインバンクとしての企業資金を囲い込むことである。

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内野 逸勢
執筆者紹介

金融調査部

主席研究員 内野 逸勢