外為法がアクティビスト活動に与える影響
2026年09月25日
近年、アクティビスト(物言う株主)の存在感が高まっている。アクティビストからの要求に対して、上場企業側や経済界からは、行き過ぎた短期志向や経営介入には問題があるといった懸念が示されている。一方で、アクティビストからの要求には企業価値向上に資する面もある。問題は、そのような建設的な要求でも、外国為替及び外国貿易法(外為法)の対内直接投資審査制度によって制約される可能性がある点である。
本制度は、外国投資家が安全保障などに関わる一定の業種(指定業種)に投資する場合に、日本政府に事前に届け出ることを求め、審査の対象とするものである。指定業種を営む上場会社の株式の取得は、取得後の持分比率が1%以上となる場合、事前届出が求められる。
もっとも、一定の条件を満たす場合は事前届出が免除される制度が設けられており、運用目的の機関投資家などは、この免除制度を利用していると考えられる。免除の条件として、自らまたは関係者が投資先企業の役員に就任しないこと、指定業種の事業の譲渡等を株主総会で提案しないこと、非公開の技術情報にアクセスしないことが求められる。
さらに、免除を受けるには、「指定業種にかかる事業の継続的かつ安定的な実施を困難にする行為を行うことを目的とする」投資でないことも必要とされている。分かりやすく言えば、対象会社の指定業種の事業を続けにくくするような要求を目的とする投資は、免除の対象外となり得るということである。例えば、電力会社に対して、設備の維持・運営に支障が出るほど大規模な株主還元を求めるようなケースでは、この条件との関係が問題になり得る。
この条件が置かれているのは、指定業種に該当する事業の存続を脅かすような行為を伴う場合には、事前届出の免除を認めた前提が成り立たないためと説明されている。しかし、この条件は抽象的であり、どのような株主提案やエンゲージメント活動を行った場合に該当するのかは、必ずしも明確ではない。
このため、事前届出免除を利用している外国投資家が、株主還元の強化や事業戦略の見直しなどを求めた場合、上場企業側が「それは免除の条件に違反しているのではないか」と主張する可能性がある。仮にその主張が広く用いられるようになれば、外国投資家によるアクティビスト活動に対して萎縮効果が生じるおそれがある。
外為法の制度趣旨からみて問題となる行為を適切に抑止することは重要だが、企業価値向上に資する建設的な提案まで過度に制約されることは望ましくない。したがって、どのような投資が「事業の継続的かつ安定的な実施を困難にする行為を行うことを目的とする」投資に当たるのかについて、分かりやすい判断基準や具体例が示されることが望まれる。
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- 執筆者紹介
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金融調査部
主任研究員 金本 悠希
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