サマリー
◆政府・与党は、第3号被保険者制度の見直しに向け検討を進めている。政府・与党はまだ具体的な見直し案を示していないが、本レポートでは仮に第3号被保険者制度を見直し、(元)第3号被保険者に保険料の負担を求めた場合の財政影響について検討する。
◆第3号被保険者制度は基礎年金制度と密接に結びついており、現在は厚生年金財政が第3号被保険者に係る給付費を負担している。このため、見直しによる財政影響は、基礎年金の計算上、(元)第3号被保険者に係る保険料や給付費を国民年金の財政で扱うのか、厚生年金の財政で扱うのかで、大きく異なる。
◆「国年移行案」は、第3号被保険者を第1号被保険者に移行した上で、元第3号被保険者に係る保険料と給付費は国民年金財政で扱うこととする案である。「国年移行案」を実施すると、国民年金の財政が悪化し、厚生年金被保険者も含め基礎年金の給付水準が低下するため、政策的な実現可能性に乏しい。
◆「厚年留保案」は、第3号被保険者に係る給付費は引き続き厚生年金財政で扱い、第3号被保険者が支払う保険料は厚生年金財政に入れる案である。「厚年留保案」では、「国年移行案」と異なり第3号被保険者の見直しが国民年金の財政に直接影響せず、第3号被保険者が新たに支払う保険料の分だけ厚生年金財政を改善させる。試算では、「厚年留保案」の実施による財政改善効果は厚生年金保険料率0.1~0.4%pt分となった。実際の制度設計や女性就業の進展、今後の厚生年金の適用拡大を考慮すると、財政改善効果は試算値の下限である0.1%pt分程度と考えられる。
◆第3号被保険者制度の見直しは「厚年留保案」であれば年金財政上の実現可能性があるが、財政改善効果は限定的である。第3号被保険者制度の見直しにあたっては、過度な財政改善効果は期待せず、制度の公平性や働き方への影響、実務などの観点から十分な議論が尽くされることを期待したい。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
現役世代の保険料率は引き下げられるか
サービス維持との両立には、給付と負担の改革、DX/AX推進が不可欠
2026年09月02日
-
令和9年度介護報酬改定に向けた注目点
改革工程に掲げられた重要論点の具体化が求められる
2026年06月29日
-
iDeCoは広がったのか-加入実態と残る課題
2026年4月加入者数395万人、12月制度改正に注目
2026年06月16日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2026年ジャクソンホール会議の注目点は?
ウォーシュ議長はインフレ抑止に対する姿勢を明確に打ち出すか
2026年08月20日
-
“TACO”指数で読む トランプ大統領の“TACO”化の兆し
市場と世論が映す政策転換のサイン
2026年08月13日
-
高市政権誕生後の長期金利をどうみるか
2035年に3.3~4.0%程度で、海外保有拡大で更なる上昇も
2026年08月12日
-
第230回日本経済予測
円安・金利上昇下の日本経済と成長力強化への課題①AI活用による経済への影響、②資産市場と経済の好循環、を検証
2026年08月21日
-
GPIFガバナンス改革の功罪と課題解決の道
目先の運用見直しの可能性は低いが、硬直的運用への対応が課題
2026年08月13日
2026年ジャクソンホール会議の注目点は?
ウォーシュ議長はインフレ抑止に対する姿勢を明確に打ち出すか
2026年08月20日
“TACO”指数で読む トランプ大統領の“TACO”化の兆し
市場と世論が映す政策転換のサイン
2026年08月13日
高市政権誕生後の長期金利をどうみるか
2035年に3.3~4.0%程度で、海外保有拡大で更なる上昇も
2026年08月12日
第230回日本経済予測
円安・金利上昇下の日本経済と成長力強化への課題①AI活用による経済への影響、②資産市場と経済の好循環、を検証
2026年08月21日
GPIFガバナンス改革の功罪と課題解決の道
目先の運用見直しの可能性は低いが、硬直的運用への対応が課題
2026年08月13日

