「戦後最長」でも実感乏しく 令和の景気拡大が映す課題

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2026年10月07日

内閣府「景気動向指数」の基調判断に基づくと、2020年5月を谷とする今回の景気拡張期間は26年7月で74カ月に達し、00年代の「いざなみ景気」を上回って戦後最長となった。実際の認定には数年程度を要するが、実質GDPや日銀短観などの推移を踏まえると、戦後最長となった可能性は高い。だが、その長さに比べて力強さは乏しい。

最大の特徴は、内需、とりわけ個人消費の弱さだ。高水準の賃上げや女性・高齢者の労働参加は家計所得を押し上げたものの、物価上昇による購買力の低下がその効果の大部分を打ち消した。26年4-6月期の家計の実質可処分所得は19年平均をわずかに下回ったとみられる。企業収益や雇用環境が堅調でも、多くの家計が景気拡大を実感しにくいのはこのためだ。

供給面では、製造業の弱さと非製造業の底堅さが対照的である。生産拠点の海外移転やアジア企業との競争激化を背景に、製造業では国内生産が伸び悩み、生産性と雇用がともに低下する業種も増えた。一方、雇用の受け皿となった非製造業も生産性の伸びは鈍い。労働力が高生産性分野へ十分に移動せず、賃金や成長力を抑えている。

「実感できる景気拡大」の実現には何が必要か。とりわけ重要なのは、生産性向上につながる国内投資の大幅な拡大だ。設備の老朽化や生産年齢人口の減少が進む中、AIを業務効率化にとどめず、新たな財・サービスの創出や事業モデルの転換につなげる必要がある。だが、日本は他の先進国に比べてAI関連投資が遅れており、企業のAI活用に対する認識も十分ではない。官民を挙げて導入・活用を加速させるとともに、産業間・企業間の円滑な労働移動やリスキリングも重要だ。

成長の果実を家計に行き渡らせることも欠かせない。実質賃金の着実な上昇に加え、インフレに対応した資産形成を後押しする必要がある。家計金融資産の半分近くを現預金が占める現状では、物価上昇によって資産の実質価値が目減りしやすいためだ。また、中低所得の現役世代への再分配強化も重要であり、29年度の本格導入が予定されている「就業者負担軽減支援金」に期待がかかる。さらに、総務省「家計調査」を基に大和総研が試算した疑似的なジニ係数では、教育支出の世帯間格差の拡大が示唆されており、人的資本形成や中長期的な成長力への影響にも目配りが必要だ。

コロナ禍やロシアのウクライナ侵略、トランプ関税、中東情勢の緊迫化など、20年代の世界経済は相次ぐショックに見舞われた。そうした中で日本が息の長い景気拡大を実現したことは評価に値する。一方、この期間は内需の弱さや生産性向上の遅れ、分配をめぐる課題も浮き彫りにした。今回の景気拡大の真価は、そうした課題を将来の成長力向上につなげられるかによって判断されるだろう。

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神田 慶司
執筆者紹介

経済調査部

チーフエコノミスト 神田 慶司