宝くじは「連番」と「バラ」どっちがお得?

考えれば考えるほど買いたくなる不思議

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2015年03月02日

  • 田中 豪

現在発売中のグリーンジャンボ宝くじは、グリーンジャンボ史上最高額となる1等と前後賞合わせて6億円が当たる可能性がある。2010年のグリーンジャンボは1等・前後賞で2億円だったと考えると、最高当せん金額は5年前と比べて3倍になっている(図表1)。

ジャンボ宝くじなどは、特定の規則に従った10枚のくじが入っている「連番」と「バラ」というセットで購入することが可能である。「連番」とは「組と番号の上5ケタ目までは同一で、末尾の番号が0~9」、「バラ」とは「連続していない番号の宝くじ10枚のセット。ただし「1の位」には必ず0から9」と定義されている(宝くじ公式サイトより)。

この定義を基に、前回の2014年の年末ジャンボ(1等・前後賞合わせて7億円)でそれぞれのセットを購入したときに、一定金額以上当たる確率を計算してみた(図表2)。(※1)

10枚セットの購入金額である3,000円を取り戻せる確率は10.11%(約10回に1回)、5万円以上が当たる確率は0.12%(約1,000回に1回)だった。連番でもバラでも当せん確率はほとんど変わらず、当せん金額の期待値(1,499.9円)も一緒である。よって、連番とバラの間には確率的にはほとんど差がないといえる。

さて、合理的な人間であれば、平均して購入金額の約半分しか返ってこないようなギャンブルは行わない。では、なぜ私たちは理性的な判断と対照的な行動を取るのか?

図表3は、一般的に用いられる期待効用理論における、リスク愛好的な人の効用関数である。リスク愛好的な人にとっては、そこそこのリターンと高いリターンの間で得られる効用の差が大きいので、そこそこのリターンでは満足できずに、より高いリターンを求める。宝くじを購入する人は、低確率で高額賞金が当たるくじを買っているので、リスク愛好的だといえるだろう。

実際に、図表3のような効用関数を想定して、リスク愛好的な人が連番・バラを買ったときにどの程度の効用を得ることが期待できるのか計算してみたところ、連番の方がバラよりも効用が高いという結果となった。やはり、図の右端にあたる高額賞金が当たる可能性があるか(1等・前後賞を同時に当てられるかどうか)が、効用に大きく作用していた。

このように、理論的には「連番の方がよい」といえる。しかし、現実をみると、宝くじ購入者に「当せん確率は低いが1等賞金が高額」(リスク愛好的な回答)と「1等賞金は低いが当せん確率が高い」(リスク回避的な回答)のどちらが好ましいかを聞くと、前者と答えた人が約2割、後者が約6割となった。(※2)つまり、購入金額が返ってくる確率が約10%しかない、ハイリスク・ハイリターンである宝くじを買っているにもかかわらず、購入者の大半はリスク回避的である。(※3)

また、「1等前後賞も狙いたいが、連番だとすぐに結果が分かってしまい、1枚1枚当たったかどうか確認する楽しみがない。なので、私は連番とバラを両方買っている。」という方もいる。この場合、当せん金によって得られる効用に加え、くじを1枚1枚確認するという作業によって得られる効用も考慮しなければならないので、一概に連番の方がいいとはいえなくなる。

結局のところ、宝くじの楽しみ方は人それぞれである。10枚セットの連番とバラのどちらを買おうか悩み始めた時点で、宝くじの楽しみはすでに始まっているのかもしれない。

さて、今回のジャンボ宝くじ、あなたが掴むのはどの未来?

ジャンボ宝くじの1等・前後賞の当せん金額の推移
宝くじを連番・バラで10枚(3,000円分)買ったときに一定金額以上が当たる確率
リスク愛好的な人の効用関数

(※1)連番・バラともに、下一桁は必ず0から9となるので、「下一桁が特定の番号」という条件の賞は必ず一回当たる。また、下一桁がそれぞれ異なっているので、同じ等を1セットの中で複数回当てることは不可能であることを用いた(ただし、前後賞や2等など複数の当せん番号が存在する場合は除く)。
なお、2等が2本あるなど、同じ等級に複数の当せん番号があり、仮に抽せんで同じ当せん番号となった場合、2回目以降の抽せんはやり直しとなる。しかし、1等と2等など別の等級であれば、全く同じ当せん番号であっても問題はなく、1枚で複数の等級に重複当せんすることは可能である。
(※2)総務省「第1回宝くじ活性化検討会 説明資料」(平成23年10月13日)、1995年~2010年の調査(出典:一般財団法人 日本宝くじ協会「第12回『宝くじ』に関する世論調査報告書」(平成22年8月))
(※3)一つの可能性として、「1等賞金は低いが当せん確率が高い」方がいいと答えた人の、効用関数がS字型である可能性がある(低い当せん金額ではリスク愛好的だが、当せん金額が高額になるにつれリスク回避的になる)。その場合、ジャンボ宝くじよりも、1等の当せん金額は低いが他の等の当せん確率は高い、普通の宝くじ(ジャンボ宝くじ以外の全国自治宝くじや東京都宝くじなど)を「連番」で購入した方がよいだろう。

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