監査役会による監査役解任?~コーポレートガバナンス・コードの読み方~
2026年09月16日
コーポレートガバナンス・コードの3度目の改訂が7月に確定したが(※1)、その中にたびたび文言が変更されたり、削除が検討されたりしてきた条項がある。【原則4-6】の解釈指針に「…例えば、監査役及び監査役会は、監査役及び会計監査人の選解任、監査報酬等に係る権限を有する。…」(「…」は文言の省略を表す)とある。「監査役及び監査役会は、監査役及び会計監査人の選解任…に係る権限を有する」と読めるが、言うまでもなく監査役・会計監査人の選任・解任を決議する権限は株主総会にある。監査役・監査役会には監査役選任議案への同意権等があり、会計監査人の選解任に関する議案の内容は監査役・監査役会が決定するとされている。また、監査役・会計監査人の解任等の場合、監査役・会計監査人に株主総会での意見陳述権が認められている。どれも選解任に「係る権限」ではあるが、選解任を最終的に決定するわけではない。
監査役解任に関するコードの記述は、以下のような変遷をたどってきた。
2015年策定時:【原則4-4】監査役及び監査役会は、取締役の職務の執行の監査、外部会計監査人の選解任や監査報酬に係る権限の行使などの役割・責務を果たすに当たって、株主に対する受託者責任を踏まえ、独立した客観的な立場において適切な判断を行うべきである。
これは、2014年の会社法改正で、前記の会計監査人の選解任に関する議案の内容は監査役・監査役会が決定するとされたことを受けての記述であろう。監査役選任議案への同意権等は2001年の商法等改正で設けられていたが、2015年コード策定時には関連する記述はなかった。
2021年改訂時:【原則4-4】監査役及び監査役会は、取締役の職務の執行の監査、監査役・外部会計監査人の選解任や監査報酬に係る権限の行使などの役割・責務を果たすに当たって、株主に対する受託者責任を踏まえ、独立した客観的な立場において適切な判断を行うべきである。
2021年の改訂で「外部会計監査人」の前に「監査役・」が加わり、「監査役…の選解任…に係る権限」が監査役と監査役会にあると記されるようになった。監査役の選解任と、会計監査人の選解任とでは、監査役・監査役会のかかわり方は異なるが、「係る権限の行使」に際して「適切な判断を行うべき」とされた。
今回の改訂の当初案(2026年4月公表)では「取締役の職務の執行の監査、監査役・外部会計監査人の選解任や監査報酬に係る権限の行使など」という部分は削除されることになっていたので、「監査役…の選解任…に係る権限」が監査役・監査役会にあるとする記述はコードから消えるはずだった。ところがこれが、当初案に対するパブリックコメントに応えて、解釈指針として復活することになった。「監査役…の選解任…に係る権限は監査役及び監査役会の役割・責務の具体例であり、…より実質的な対応を促進することが適切…」(※2)と考えられるからとのことだ。
「監査役…の選解任…に係る権限」に関する記述は、2015年コード策定時には設けられておらず、2021年改訂で登場した。2026年改訂の当初案では削除されるはずだったが、パブコメを受けて再び盛り込まれるに至った。二転三転といってもよいだろう。
コードの改訂に際して多様な意見が寄せられ、それを踏まえて文言が調整されるのは当然である。しかし、会社法上の権限関係が明確な事項についてまで、記述が揺れ動くことが適切であるとは思い難い。コードに求められるのは、実務にとって誤解の少ない指針を示すことではないだろうか。
参考:
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政策調査部
主席研究員 鈴木 裕

