日本の競争力回復は円安の転換を示唆するか
2026年08月19日
ドル円レートは2026年に入って約40年ぶりの円安水準を記録した。これに対して、政府・日本銀行(日銀)は4月以降に円買い介入を相次ぎ実施している。そして、7月には15年ぶりに日米協調介入を実施したことが明らかにされた。市場介入はあくまで時間稼ぎとされ、為替市場のトレンドを変えられるとは限らないものの、過度の円安阻止で日米通貨当局の足並みはそろっている。
短期的に為替に影響しやすい日米金利差については、インフレ対応のために日銀が利上げペースを速めるとの期待が強まりつつある。一方、米国では雇用情勢の軟化等を受けて利上げ見通しはやや後退してきた。日米金利差が縮小しやすくなっていることは、円を下支えする可能性があるが、情勢は流動的だ。
より長期的にみると、通貨の総合的な実力を示すとされる実質実効レートにおいて、円は1995年のピーク以降、長期の円安となっている。そして、その動きと興味深い連動を示す指標として、IMD(国際経営開発研究所)が発表する世界競争力ランキングが挙げられる。同ランキングで日本は1992年まで総合1位だったが、その後は下落基調が続き、2024年には過去最低の38位となった。しかし、その後は2年連続で上昇している(2026年は30位)。そして、これまでは同ランキングの変化に2~3年程度遅れて、円の実質実効レートも変化する傾向がみられた(図表参照)。
世界競争力ランキングは経済・政府・ビジネス・インフラにわたる幅広い分野への評価だが、為替の円安と並んで、日本経済の地位低下を反映してきたと考えられる。中でも、日本は「ビジネス効率性」(部門別ランキングで49位)が弱みとなっている。これについて、足元では高市政権が官民一体での取り組みを目指す成長戦略の着実な実行が問われているといえよう。IMDは足元の日本の競争力に関わる課題として、①賃上げと新たな経済の展開による成長の促進、②潜在成長率の引き上げと労働市場の柔軟性向上、③最先端技術や無形資産への戦略的投資の拡大、④経済安全保障およびサプライチェーンの強靭化、⑤財政健全化と持続可能な社会保障制度を通じた競争力の強化(以上、5項目の日本語訳は大和総研による)、を挙げている。このうち②~④に関しては、現在の成長戦略の中核であるのに対して、①や⑤については、過去と比較して政策面の優先順位がやや下げられている印象だ。しかし、競争力を評価する立場から見ると、これらの部分もおろそかにしてはならないということだろう。同ランキングは相対的な評価であるとはいえ、投資不足が指摘される日本国内に今後大規模な投資を呼び込むにあたって、国際的な日本への評価のひとつとして無視はできない。
ドル円レートへの日米協調介入を受けて投機筋の円売りポジションには急速な縮小が見られるなど、為替レートの円安は当面止まる可能性がある。その先には、近年でも数回見られた3カ月程度の円高場面が考えられるかもしれない。ただし、歴史的な円安トレンドの転換については、なお見極めが必要だろう。成長戦略の実行が国内投資を喚起し、日本の生産性を向上させるならば、為替市場でも本格的なトレンド転換につながる可能性があろう。
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- 執筆者紹介
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経済調査部
シニアエコノミスト 佐藤 光

