社債市場整備の機は熟した

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2026年08月03日

政府は「経済財政運営と改革の基本方針2026」(2026年7月21日閣議決定、以下「骨太方針2026」)において、「『強い経済』の実現」に向け、17の戦略分野を中心として、官民が一体となって大胆な危機管理投資・成長投資を行っていくとの方針を示した。62の主要な製品・技術等において2040年度までの累計で370兆円を超える官民投資を想定するとともに、2040年度には年間で250兆円の国内投資を実現することを新たな官民目標と位置付けた。この場合、関係する企業には多額の資金調達が必要となりうるが、この点に関して、「骨太方針2026」では、戦略分野への成長投資などを金融面で支えるべく、金融機関の資金供給・成長支援機能の強化、厚みのある金融市場の実現、地域金融力の強化などを図ることとされた。

企業が成長資金を確保する上で、金融機関の融資を通じた資金供給は引き続き重要な役割を果たすことになろう。しかし、自己資本水準にかかる規制なども存在する中、金融機関がそのバランスシートを膨らますことには一定の限界もある。かつてリスクテイクを金融機関のバランスシートに過度に依存した結果、1990年代のいわゆるバブル経済の崩壊の過程において、金融システムが機能不全に陥り、日本経済全体に大きな影響が及んだことは人々の記憶になお深く刻まれている。

このため、「骨太方針2026」も指摘するように、厚みのある金融市場の実現が必要となるが、そこでは、現状、国際的にみて残念ながら未成熟と言わざるを得ない社債市場の整備が重要な課題となる。社債市場整備の必要性はこれまでも折に触れ、指摘されてきたが、当時は企業に多額の資金余剰が存在し、市場の金利機能も大きく失われていたため、どうしても検討に力が入らないまま推移してきたきらいがある。だが、こうした環境は変化しつつあり、社債市場を充実させていこうという機運は急速に高まってきているようにみえる。経済産業省の「企業金融の高度化に向けた社債市場の在り方に関する研究会」はこの4月20日に中間報告書を公表し、社債市場の活性化に向けて包括的な提言を行った。また、日本証券業協会が7月1日に公表した「当面の主要課題」でも、社債発行の効率化・円滑化等に係る実務慣行の整理、社債の取引情報の報告・発表制度の改善・拡充など社債市場の活性化に向けた取り組みの加速がうたわれている。

一方、長年にわたり市場の整備に取り組んできた金融庁が社債市場の問題にどこまで熱心なのかは、これまで必ずしも明確でなかったと受け止めている。金融庁が推進してきた資産運用立国の実現に向けた取り組みは、これまでのところ、資産運用と言いながら実際は基本的にエクイティの世界を念頭に置いたものだったといえる。しかし、家計などによる資産運用の選択肢が現預金とエクイティ性資産に限られるというのはあまりに極端だろう。運用対象の多様化という観点からも、社債などのデット性資産の存在意義は大きい。

これまで社債市場の整備について考える際には、「ニワトリと卵」という問題がいつも大きく立ちはだかってきた。社債市場には流動性がないから、起債や投資をためらう。起債や投資がためらわれるから、流動性が高まらない。こうした悪循環を断ち切っていくためには、社債市場の活性化に向けて、それこそ官民一体となって、関係者の施策を集中的に投入していくことが必要となる。

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池田 唯一
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専務理事 池田 唯一