第3号被保険者制度は「良い制度」とはいえないけれど
2026年07月27日
年金の第3号被保険者(以下、3号)制度の見直しを検討する会合が、近く政府または与党内に設置される見通しである。
3号は、個人として保険料を負担していないことから、給付と負担の関係に照らして不公平だとの指摘がある。
一方、政府はこれまで、一定の条件の下では、1人当たりの年収が同じであれば、1人当たりの保険料も年金額も同じになるため、世帯単位で見れば公平な制度だと説明してきた。
例えば、夫婦とも年収400万円の共働き世帯、一方が年収800万円で他方がゼロの片働き世帯、年収400万円の単身世帯は、いずれも1人当たりの年収は400万円である。これらの世帯では、1人当たりの保険料も年金額(老齢基礎年金と老齢厚生年金の合計)も、原則として同じになる。このように3号制度は、保険料や給付を「世帯単位」で判定する仕組みである。
ただし、3号制度には配偶関係しか「世帯」を考慮せず、3号になれるのは「配偶者が厚生年金に加入している者」だけだ。事実婚も配偶者に含まれるが、異性であることが前提である。
このため、単身世帯やひとり親世帯では、自分が失業して厚生年金被保険者ではなくなった場合、3号にはなれず、第1号被保険者(1号)として自ら保険料を払う必要がある。また、厚生年金に加入する兄弟姉妹や同性パートナーと同一世帯で暮らしている者も、「配偶者が厚生年金に加入している者」に当たらないため、失業時に3号になれるわけではない。
世帯のあり方が多様化し、所得が低い者ほど配偶者を得にくい傾向も強まりつつある。こうした現在において、この仕組みは国民の理解を得にくくなっており、現在の3号制度を積極的に「良い制度」と評価することは難しい。
そこで、「世帯」ではなく「個人」を単位として、働くことが困難な配慮すべき事情があるかどうかを判断し、現在の3号に相当する保護を与えるべきではないかとの意見もある。だが、個人単位で制度化する場合、働くことが困難な事情を一人一人どう判定するかという実務上の困難が伴う。
例えば、育児や介護によるものは、末子年齢や要介護認定などの指標を用いて外形的に判定しやすく、保険料免除の対象とすることができそうだ。しかし、不妊治療に専念している者や、学校に通うことが困難な子どもをケアしている者など、さまざまな事情をすべて外形的に判定することは難しく、個人単位の制度に組み替えると、一部の社会的弱者が制度から漏れてしまうおそれがある。
これらを踏まえると、3号制度を見直す場合にも一定の課題を抱えることになる。
3号制度を維持するとしても、見直すとしても、「相対的に悪くない」方を選ぶ難しい判断になる。今後、政府または与党に設置される検討会では、メリット・デメリットを丁寧に精査し、国民的議論を経たうえで方針が決定されることが望まれる。
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- 執筆者紹介
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金融調査部
主任研究員 是枝 俊悟
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