欧州では猛暑対策が政策議論に

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2026年07月24日

  • ロンドンリサーチセンター シニアエコノミスト(LDN駐在) 橋本 政彦

2026年夏、欧州は記録的な暑さに見舞われている。EUの気象情報機関であるコペルニクス気候変動サービスによれば、2026年6月の西欧の気温は6月としては過去最高であり、特に激しい熱波が襲来した6月後半には、スペインやフランス、ドイツなどの多くの地域で気温40度を超える暑さを記録した。

通常であれば夏季でもそれほど高温にならない欧州では、一般の住居のみならず、学校や病院などの公共施設でもエアコンが設置されていない地域が多い。また、電車や道路などのインフラも極端な暑さを想定して設計されていないことが多く、記録的な猛暑はさまざまな問題を引き起こしている。

実際、筆者が住むロンドンでも、6月後半には暑さを理由に急遽、学校の授業時間が短縮されたほか、機材の不調による鉄道網の乱れや、公共サービスの遅延などが発生した。日本で「猛暑効果」というと夏物消費の盛り上がりなど、プラスの側面を取り上げられることも少なくないように思われるが、欧州での猛暑は経済・社会にとってマイナスが大きいというのが、現地に住む者としての実感である。

こうした中、異例の暑さへの対応は欧州の多くの国で喫緊の課題となっており、政策論争にまで発展している。

フランスでは7月に入り、気候変動対策を強く訴える緑の党、および急進左派政党・不服従のフランスの一部議員が、現政権の気候変動への取り組みが不十分であるとして不信任案を提出した(賛成票は132票で可決に必要な過半数の289票には届かず、不信任案は否決)。不服従のフランスの姿勢はとりわけ強硬であり、気候変動を助長するとしてエアコンの利用に否定的な立場を取る。

一方、この主張に真っ向から対抗しているのが、極右政党・国民連合である。国民連合は、6月末の熱波を受けて、すべての学校や病院にエアコンを設置する計画、および家庭でのエアコン設置を支援するための融資制度を提案した。暑さの根本の原因と考えられる気候変動への対策よりもむしろ、直面する暑さへの対応を優先すべきというスタンスである。即効性のある政策を打ち出すことで、有権者にアピールするという意図もあるとみられるが、国民連合は以前から企業や家計の負担になるとの理由から、過度な気候変動対策に反対している。

現在、フランスは中道のマクロン大統領を支持する会派が議会を主導しており、左派・右派双方による極端な主張が実現する見込みは小さい。だが、2027年4月・5月には大統領選挙が予定されており、選挙結果次第ではこうした構図が崩れる可能性がある。政党支持率では国民連合がリードする状況が長く続いており、大統領選挙に関する世論調査でも、国民連合のマリーヌ・ルペン氏の優勢が伝えられている。仮にルペン氏が次期大統領となれば、フランスの気候変動対策は推進力を失う公算が大きい。

EUの中心国の1つであるフランスの政策転換は、気候変動対策を成長戦略の中心に据えるEU全体の政策にも影響を及ぼしかねない。夏の暑さが過ぎれば、猛暑対策の議論は落ち着くと見込まれるが、大統領選挙に向けた気候変動対策を巡る議論には引き続き注目していく必要があるだろう。

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橋本 政彦
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ロンドンリサーチセンター

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