スポーツイベント中継で存在感を増す動画配信事業者の台頭は業界再編を促すか
2026年07月22日
史上最多となる48の国・地域が出場し、1か月超に及ぶ熱戦が繰り広げられた「FIFAワールドカップ2026™」(以下、WC)が閉幕した。本コラムは準決勝終了時点で執筆しているが、WCは多くの人々に大きな感動を残してフィナーレを迎えたことであろう。
今回大会は動画配信サービスのDAZNとNHK、日本テレビ、フジテレビで配信・放送された。前回大会の全64試合はABEMAが無料配信したが、今回大会の全104試合をリアルタイムで視聴するためにはDAZNの有料サービスへの加入が必要になった(※1)。
また、2026年は「2026 ワールドベースボールクラシック™」も行われたが、動画配信サービスのNetflixが放送権を独占的に取得し、地上波では放送されなかった。国民的関心の高いスポーツイベントが無料で視聴できなかったことも背景にあり、スポーツ庁及び総務省はスポーツの国際大会における国民の観る機会に関する論点を整理し、政策の方向性の検討を目的に「スポーツを観る機会の確保及びスポーツ放映に関する検討会」を発足した。
同じような国際的スポーツイベントであるオリンピックについては、2032年のブリスベン(オーストラリア)大会までNHKと日本民間放送連盟で構成する「ジャパンコンソーシアム(以下、JC)」が放送権を獲得している。上記検討会(第1回)の議事録(※2)で日本オリンピック委員会(JOC)は「放映権を持つIOC(国際オリンピック委員会)は、オリンピック憲章の中で、様々なメディアによる広範囲な取材・中継を保証し、世界中の多くの人々による視聴を保証するため、必要な措置を取るとして、各国・地域で放送権者と契約している」と発言しており、動画配信事業者(以下、OTT事業者(※3))が独占的に放映権を獲得するような事態にはならないと考えられる。
一方でオリンピックの放映権料は高騰しており、近年のオリンピック放送での民放の収支は厳しい状況に直面している。2034年以降の大会はJCのスキームでは放送権を獲得できず、WCのようなNHK+民放にOTT事業者を加えたスキームによる放送権の獲得も選択肢になると考えられる。
資本力で上回る海外OTT事業者はこのような世界的スポーツイベント中継をきっかけに存在感を増している反面、「視聴機会の確保」には懸念を残したように見える。一方国内OTT事業者は放送事業者以外からの新規参入もあり当初乱立していたが、近年では事業からの撤退や縮小による淘汰が進むとともに同業による経営統合も進展しており、有力事業者を中心に資本力や事業基盤の強化が図られている。政府が求める「スポーツを観る機会」や放送事業者との組合せも含めて考えると、海外OTT事業者への対抗力を高める観点から国内OTT事業者同士の統合や連携がさらに進み、競争力の高い国内OTT事業者の誕生が期待される。
(※1)日本代表戦の全試合、準決勝、3位決定戦、決勝戦は無料配信
(※3)Over-the-Top(OTT):インターネット回線を利用して動画や音楽などのコンテンツを直接配信するサービス
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コーポレート・アドバイザリー部
主任コンサルタント 遠藤 昌秀
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