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福岡空港民営化-官民連携の肝は組み合わせの妙

2017年08月02日

金融調査部 主任研究員 鈴木 文彦

2019年4月の事業開始をめざし、福岡空港の民営化に向けた手続きが進んでいる。5月には公共施設等運営権の入札に関して募集要項が公表されたところだ。第三セクターが運営する空港ターミナルビルに出資する西日本鉄道、九州電力をはじめとする地元連合が入札参加を表明。その他いくつかの企業グループが入札に参加する見通しだ。福岡空港の2015年度の乗降客数は関西国際空港に次ぐ4位の2137万人。これまでも増加傾向を辿っており、インバウンド需要の拡大を背景に更なる伸びが期待される。

成長性だけではない。福岡空港にはJR博多駅から地下鉄2駅という都市近接性の強みがある。弱みはキャパシティ。航空法の「混雑空港」に指定されるほどに過密ダイヤとなっており、滑走路増設の予定はあるものの、需要の伸びに対して発着回数を容易に増やせない状況に当面変わりはない。

そうした中、民営化にあたって、福岡空港の強みを生かし弱みをカバーする戦略性が求められる。考えられる一手として、第一に商業機能の充実があげられる。空港で集客し、ターミナルビルの商業施設に回遊させる客導線を空港とターミナルビルが協調して整備することだ。空港と商業施設の関係は、いわば伊勢湾岸自動車道と刈谷ハイフェイオアシス、東京スカイツリーとショッピングモール「東京ソラマチ」の関係と相似形をなす。第二にフレキシブルな料金体系の設定。混んでいるときに高く、そうでないときには安くするなど、季節や時間帯による繁閑差がある稼働率の平準化を促す着陸料の設定が考えられる。

第三は北九州空港との連携。拡張性がネックとなる福岡空港にとって、北九州空港との連携は長期的課題のひとつだ。募集要項では、北九州空港との相互補完策についての提案も求められている。考えられるコンセプトは、福岡の空港と九州の空港というすみわけである。九州最大かつ拠点都市の福岡から見て、福岡空港は近いがコストも高い、北九州空港は若干遠いがコストパフォーマンスに優れるというポジショニングだ。沖合にある北九州空港は24時間利用可能という利点がある。早朝に着陸しても始業時間には福岡に着く。まさにLCC(ローコストキャリア)の拠点にふさわしいと思う。また、福岡以外が旅行の目的地なら北九州空港を拠点にするのがよいだろう。鉄道事業や観光業とのコラボで、福岡空港から九州入りし、九州を反時計回りで一周し北九州空港から出てゆくゴールデンルートを作ることも考えられる。

民営化のメリットにもいろいろあるが、たとえば商業機能の強化なら第三セクターのままでも可能だ。現にターミナルビルがリニューアル工事中で、今年の1月には新しいフードコートがオープンしている。民営化のメリットは、空港、ターミナルビルのそれぞれの経営改善というより、むしろこれらの「組み合わせ」に見いだせる。“空港施設とターミナルビルの商業施設の組み合わせ”、“空港と周辺エリアとの組み合わせ”、“福岡空港と北九州空港の組み合わせ”、そして“空港と鉄道・バス、観光業との組み合わせ”。民営化のメリットはこれらの組み合わせによって生まれる新しい価値である。

それぞれが横のつながりで連携することもできなくはないが、「船頭多くして船山に登る」と言う。総論はわかっていても縦割り意識が勝ってしまい真の協調行動は難しい。この事例の本質は、福岡空港の看板の下、国、自治体、民間企業が関係する複数の事業体で施設別に分かれて経営していたものが、民間企業グループの経営に一体化することにある。官民連携の肝は組み合わせの妙。福岡空港の民営化の動向を見守りつつ、公共施設等運営権方式の官民連携事業を進める際の参考にしたい。

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鈴木 文彦

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金融調査部
主任研究員 鈴木 文彦