サマリー
◆財政の安定性について議論する際、しばしばドーマー条件が参照される。足下では、金利の上昇の効果がまだ十分には名目実効金利に表れていない一方、物価上昇を背景に名目GDP成長率が上昇していることで、一時的にドーマー条件が満たされていると考えられる。
◆ドーマー条件は、国債の供給面のみに着目しており、国債を発行すればすべて市場で安定的に消化されることが前提となっている。今後、日銀による国債買入れの減額が進められる中、国内銀行の国債追加買入余力は少なく、海外投資家への依存により、長期金利は上昇しやすいだろう。ドーマー条件は今後成立しにくい状況になると予想される。
◆財政安定化のためには、ドーマー条件だけでなく、基礎的財政収支(PB)も重要な要素である。これまでの債務残高対名目GDP比の変化を要因分解すると、PB赤字が債務残高対名目GDP比の押し上げに常に寄与してきた。ドーマー条件が成立した場合であっても、PB赤字が大きければ、債務残高対名目GDP比は上昇しうるし、債務残高対名目GDP比を継続的に上昇させてきたのはPB要因であることを認識する必要がある。
◆高市首相は、名目GDP成長率の範囲内に政府債務残高の伸び率を抑えることで、債務残高対名目GDP比を引下げていくことを強調している。債務残高対名目GDP比が低下する状況が続けば節度ある財政が実現したと評価できるが、それはPBを適切にコントロールしていくということに他ならない。
◆PBを安定的に均衡ないし黒字化させるには、景気に左右されにくい安定的な税収を確保する必要がある。理論的には、税収に占める消費税の割合を引上げることが最も財政の安定化に資すると言えそうだ。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
国・地方のPBは2026年度に均衡する?
補正予算編成でPB赤字の公算大
2026年01月14日
-
財政政策と金融政策の境界線 -金融政策の進化と副作用としての中央銀行の独立性の危機
財政シリーズレポート3
2025年12月15日
-
日本の財政の現状② 歳出と収支
財政シリーズレポート2
2025年07月18日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2026年ジャクソンホール会議の注目点は?
ウォーシュ議長はインフレ抑止に対する姿勢を明確に打ち出すか
2026年08月20日
-
“TACO”指数で読む トランプ大統領の“TACO”化の兆し
市場と世論が映す政策転換のサイン
2026年08月13日
-
高市政権誕生後の長期金利をどうみるか
2035年に3.3~4.0%程度で、海外保有拡大で更なる上昇も
2026年08月12日
-
第230回日本経済予測
円安・金利上昇下の日本経済と成長力強化への課題①AI活用による経済への影響、②資産市場と経済の好循環、を検証
2026年08月21日
-
GPIFガバナンス改革の功罪と課題解決の道
目先の運用見直しの可能性は低いが、硬直的運用への対応が課題
2026年08月13日
2026年ジャクソンホール会議の注目点は?
ウォーシュ議長はインフレ抑止に対する姿勢を明確に打ち出すか
2026年08月20日
“TACO”指数で読む トランプ大統領の“TACO”化の兆し
市場と世論が映す政策転換のサイン
2026年08月13日
高市政権誕生後の長期金利をどうみるか
2035年に3.3~4.0%程度で、海外保有拡大で更なる上昇も
2026年08月12日
第230回日本経済予測
円安・金利上昇下の日本経済と成長力強化への課題①AI活用による経済への影響、②資産市場と経済の好循環、を検証
2026年08月21日
GPIFガバナンス改革の功罪と課題解決の道
目先の運用見直しの可能性は低いが、硬直的運用への対応が課題
2026年08月13日

