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消費税増税を確実に行うための政策的枠組みが必要

2017年07月12日

経済調査部 シニアエコノミスト 神田 慶司

およそ1年前の2016年6月1日、安倍晋三首相は2017年4月に予定していた消費税増税の30カ月延期を表明した。中国など新興国経済に陰りが見られ、円高・株安が年初から断続的に起こるなど、経済の先行きが懸念されたためである。

その後の経済状況を振り返ると、欧米では金融緩和策が出口に向かうことになったように、世界経済は先進国を中心に回復基調が続いている。日本では2017年6月の月例経済報告で景気が「緩やかに持ち直している」と判断され、景気拡張期間はまもなく戦後2番目に長い「いざなぎ景気」(1965~70年)に並ぶ。結果から見れば、2017年4月は消費税増税を実施できる環境にあった。

もっとも、将来に起こる経済ショックの多くは事前に想定することができないため、半年先の見通しでも不確実性が大きい。著名なノーベル経済学賞受賞者でさえ、1年前には世界経済の悪化を予想していた。問題は経済予測の不確実性が大きいことではなく、経済予測の不確実性によって必要な消費税増税が再び先送りされる可能性が小さくない点にある。景気に配慮しつつも、消費税増税を確実に実施するための政策的な枠組みが必要だ。

すなわち、消費税増税を予定通り実施することは大前提とすべきであり、仮に増税時に景気が悪ければ経済対策で対処すればよい。例えば、消費税増税による負担増加分を給付金として家計に支給すれば、増税を先送りすることと同様の効果が得られる。増税実施の判断を1年近く先の経済見通しに依存していては、それが政府の予算編成全体や財政の持続可能性に大きく影響せざるを得ない。一方、機動的に実施できる経済対策であれば、実際に増税するタイミングの景気動向を確認して実施できる。不確実性の大きい経済の「見通し」ではなく、「現状」に基づいて、家計に負担を求めるタイミングを判断できるメリットは大きい。

高齢化の進展等により、社会保障費は長期に増加すると見込まれる。いずれ消費税率は少なくとも20%程度へ引き上げる必要があるだろう。社会保障目的税である消費税の税率引上げが先送りされ続ければ、財政赤字に大きく依存する社会保障制度の構造改革が十分に進まず、財政・社会保障制度の持続可能性の確保はいっそう困難になる。過去2回の増税延期の経験を活かした政策運営の工夫が求められる。

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