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ドゥテルテ政権の実行力でインフラ整備が加速?

2017年03月27日

新田 尭之

3月の中旬、フィリピンのマニラを訪問する機会を得た。その際、特に印象に残った点の一つは、ドゥテルテ政権の実行力を評価する声である。ドゥテルテ政権といえば、超法規的な殺人も厭わない麻薬撲滅運動というイメージが強いように思えるが、以下ではインフラ整備を例にドゥテルテ政権の実行力について説明する。

ドゥテルテ政権がインフラ整備の中でもとりわけ優先する項目の一つはマニラ首都圏の渋滞緩和に向けた交通網の整備である。マニラでは通常15分程度の道のりが渋滞時には1時間以上かかることも珍しい話ではない。かといって鉄道網も未成熟なため、東京のように電車・地下鉄に乗って渋滞を回避することもできず、ビジネスを行う上ではもちろんのこと、日常生活を送る上でも重大な障害となっており、市民の多くが不満を抱いている。

この問題に対する有効打の一つと言われているのがマニラ首都圏から北に延びる北ルソン高速道路(NLEX)と南に延びる南ルソン高速道路(SLEX)を連結する高架道路の建設である。このマニラ首都圏を縦断する高架道路が建設されれば、従来では2時間を要した北ルソン高速道路~南ルソン高速道路の道のりが20分までに短縮される等の効果が見込めるという。

しかし、この工事はなかなか進まなかった。理由の一つは工事の入札にスイスチャレンジ方式を用いたためである。スイスチャレンジ方式は、2社以上の事業者が入札することを前提としており、上記のケースに関しては対抗馬が現れなかったが故に案件それ自体がしばらく放置されてしまったという。しかし、2016年6月末に誕生したドゥテルテ政権下ではインフラ整備を迅速に行うべく、「(ある程度の期日を設けた上で)対抗馬が現れない場合は初めに提案した企業が落札する」といった形となった。その後、上記の高速道路の建設案件でも初めにプロジェクトを提案した企業が対抗馬なしに事業者に決定され、2020年9月の完工を目指してプロジェクトは動き出したという。

この他にも、フィリピン政府が市民の不満を解消させようとした結果としてインフラが改善される動きもある。ダイヤル8888もそうした手段の一つである。これは、汚職・劣悪な公共サービス等に不満を抱いた人が8888の番号に電話すると、ドゥテルテ大統領と旧知の仲であるレオンシオ・エバスコ内閣官房長官の指揮下にある苦情センターに直接繋がるという仕組みである。このシステムが機能している実例をフィリピン人から教えられた。それによれば、橋梁の補修工事が半年間以上放置されているといった苦情をダイヤル8888に寄せたところ、それから3日以内には工事が開始され、作業も短期間で完了したという。ドゥテルテ大統領は「政府機関・職員がダイヤル8888を通じて寄せられた苦情に対して即座に対応できなかった事態は処分の対象となる」とも発言しており、こうした言動がダイヤル8888の実効性を高めた可能性もあろう。

フィリピンが外資系企業を誘致するに当たってインフラ不足は積年の課題であった。例えば、国際協力銀行が2016年に日系企業を対象に調査したところ、フィリピンで今後中期的(3年程度)事業を展開する上での課題として最も多く挙げられた項目はインフラの未整備であった。しかし、上記の事例を見る限り、ドゥテルテ政権がその実行力を以てインフラ整備を加速させる蓋然性はフィリピンの歴代政権の中でも一際高いように思える。そうした意味で、「インフラ整備の黄金時代を到来させる」というドゥテルテ大統領の台詞はあながち大言壮語とは言えないのではないか。

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