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待機児童問題をどうすればよいのか

2016年03月31日

リサーチ本部 執行役員 リサーチ担当 兼 政策調査部長 鈴木 準

保育所入所待ちの待機児童が多いという課題が、政治問題化している。3月24日、野党5党は保育士等処遇改善法案を共同で国会に提出、自民党は3月25日に待機児童対策緊急提言を公表している。政府側でも福祉の一環として保育所行政を担当する厚生労働省が、「待機児童解消に向けて緊急的に対応する施策について」を3月28日に発表した。

しかし、待機児童の多さとそれがもたらしている悪影響は、ここにきて急に顕在化したわけではない。各年4月時点の待機児童数をみると、03年の26,383人から07年の17,926人まで減少した後、10年には26,275人まで増加。その後、14年に21,371人まで減少し、15年は23,167人に増えた。つまり、2万人前後の待機児童が存在する状況が長期に続いている。

ここで踏まえるべきことは、現状に腕を拱いてきたわけではなく、例えば15年の保育所定員(15年度からの新制度に基づく幼保連携型認定こども園等を含む)は03年と比べて約50万人増やされている。現在も、17年度末までに保育の受け皿を13年度から50万人分増やす待機児童解消加速化プランが進められている。放課後児童クラブの待機問題などと合わせて、子育て支援が重要だという認識は徐々に強まってきたと思われる。

数十万人単位で供給量を強化しているにもかかわらず、待機児童が一向に解消しないことは、就労との両立を諦めて保育所を利用せずに子育てしている人や、就労を優先して子供(子供がいない人は1人目の子供、子供が1人いる人は2人目の子供)をもうけることを諦めている人がいかに多いかを示している。待機の行列が少し短くなれば、行列に新規に並ぶ人が次々に出てくる。なかなか行列が解消しない現象は、需要が強い財・サービス一般にみられることである。

保育所定員を増やすことで、出生率と女性就業率の上昇傾向を作ることができれば、政策は一定の成功をもたらしていると言ってよい。今後どのくらいの保育所をどのように整備するかは、データやエビデンスに基づいて議論する必要があるだろう。施策の効率性やコストを十分に考えずに無理やりに待機児童を減らすことだけを目的にしても、ヒト・モノ・カネの供給制約や潜在需要の大きさに圧倒され、結局はうまくいかないということになりかねない。

待機児童問題に対する社会全体の関心が強まった現在は、この課題を考える好機である。保育士の配置基準において自治体が国の基準に独自に上乗せすることで保育量を減らしている状況、保育士の有資格配置要件弾力化の運用状況、保育所に関する経営主体の多様化や第三者評価導入・活用の状況、認可保育所と認可外保育所への政策サポートの現状などを、もっと広く国民全体で共有すべきではないだろうか。

待機児童は都市部の問題だが、都市部でも幼稚園の定員充足率が低いケースがあり、いわゆる幼保一元化の検討も改めて求められる。幼稚園と保育所の両者には相当規模の公費が投入されており、使い道を効率化すべきことは納税者の立場から当然である。そして、利用者の保育料引上げという議論が少ないのも不思議だ。認可保育所の廉価な利用料が需要超過を生んでいるのだから、多少の保育料引上げによって供給者の収入を増やし、できる限り需給を一致させるという考え方も必要である。

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鈴木 準

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