原油安、円安下での物価実感
2015年02月03日
国際原油市況は2014年半ばから急落し、直近のピークをつけた2014年6月に比べて半値を下回る水準まで低下している。原油価格の下落は、産油国から原油純輸入国への所得移転であるため、原油の大半を輸入に頼る日本経済にとっても大きなメリットになるとみられる。とりわけ、物価下落による購買力の向上が、増税後低迷してきた個人消費を刺激する効果に対する期待が高まっている。
実際、2014年5月時点で前年比+3.7%だったCPI上昇率は、エネルギー価格の低下を主因に12月には同+2.4%まで低下しており、物価上昇による実質賃金の押し下げ幅は縮小傾向にある。また、国際原油市況下落がエネルギー価格に転嫁されるには数ヶ月程度のタイムラグを伴うことから、足下までの原油価格の下落によってCPIは今後一層下押しされる可能性が高く、家計の購買力を向上させる見通しである。
しかし、CPI上昇率が縮小している中でも、物価に対する消費者の「実感」が低下していない点には注意が必要であろう。日本銀行「生活意識に関するアンケート調査」によれば、「1年前に比べ物価は何%程度変化したと思うか」という問いに対する回答の平均値は、2014年6月時点では+4.1%だったのが、2014年12月には+5.3%とむしろ上昇している。
この原因として考えられるのは、原油安と同時に円安が進行したことである。円安は輸入価格の上昇を通じてCPIを押し上げるが、原油価格下落の影響がエネルギーなどの限られた品目に集中して表れるのに対して、円安による輸入価格の上昇は食料品から生活用品まで多岐に亘る。この結果、CPIの構成品目のうち前年に比べて物価が上昇した品目の割合を見ると、CPI上昇率の鈍化とは対照的に高止まりしており、こうした物価上昇の「広がり」が家計の物価実感を押し上げているとみられる。また、食料品や生活用品は、エネルギー関連の品目よりも購入頻度が高いことも、原油価格による物価下落を実感しづらくしているのだろう。
原油価格の下落が物価を押し下げるのと同時に、円安を背景とした物価上昇圧力についても当面継続する見込みであり、家計が物価下落を実感しづらい状況が今後も続くとみられる。このような状況においては、物価下落による個人消費の押し上げも限定的なものに留まる可能性がある。もちろん、原油価格の低下はコストの低下によって企業収益を改善させる効果なども持つため、経済にとってプラスであることに疑いはないが、その効果に過度な期待をすべきでないかもしれない。

このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。

- 執筆者紹介
-
ロンドンリサーチセンター
シニアエコノミスト(LDN駐在) 橋本 政彦
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
中国:26年1Qは予想外の堅調で5%成長
ただし、中東情勢緊迫長期化なら政府目標4.5%~5%成長は困難に
2026年04月17日
-
原油高の国内への波及経路と価格転嫁率を踏まえた消費者物価への影響
原油・天然ガス・石炭価格の10%上昇は物価を最大約0.3%押し上げ
2026年04月17日
-
令和8年金商法等改正法案 有価証券に関する不公正取引規制等の見直し
市場制度ワーキング・グループの提言がそのまま反映される
2026年04月17日
-
熊谷亮丸の経済・金融 Foresight 何故、円安・ドル高が止まらないのか?
中東情勢の混乱が続く中、円安と物価高・実質賃金低下の悪循環が継続するリスク
2026年04月16日
-
ホルムズ海峡封鎖で変わる世界地図—改めて問われる「成長投資」とは?
2026年04月17日

