突然の入院で改めて認識した「業務プロセス上のリスク」について

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2014年09月22日

  • データアナリティクス部 主席コンサルタント 市川 貴規

先日、体調を崩し、急遽、一週間ほど入院することになった。スケジュールの変更をお願いした一部のお客様には大変な迷惑を掛けることになってしまったが、現在では、すっかり体調も戻り、健康の素晴らしさを実感する日々を送っている。入院期間中は、日常生活の中ではあまり気付かないことや、時間をかけることができなかったことにも、じっくりと向かい合うことができ、ある意味、有意義な時間を過ごすことができた、と実感している。今回のコラムでは、そんな入院生活で改めて認識した「業務プロセス上のリスク」というものについて触れてみたい。

入院することが決まり、最初に考えたのは、「入院がどの程度の期間となり、その期間中に予定されている仕事について、どのように対応していくか。」ということであった。今回のように突発的な入院をしてしまうと、事前のスケジュール調整や、顧客に対する直接的な連絡は当面できず、一時的に業務をストップさせてしまうことになる。幸い、今回のケースでは、

  1. 社外からの業務メールの閲覧により、必要な情報を遅滞なく、出社している他のメンバーに伝えることができたこと (※1)
  2. 1の情報や予定されていた仕事に対して、業務のマニュアル化とファイルサーバ上での情報の共有化が出来ていたことによって、出社している他のメンバーによる代役が可能であったこと

によって、入院中、最低限ではあるが、業務を進めることができた(尤も入院期間が短期間であったことと、病棟内を比較的自由に動けるような状況であったことも大きかったと思う)。

ところで、今回のケースだけでなく、突発的な入院等の理由で、従業員が長期・短期問わず、急遽出社できなくなるリスクは、どの企業・組織にも存在するだろう。筆者は退職給付会計に関するコンサルタントとして、当該業務に携わる人事や経理財務担当者と多くの接点を持っているが、今回の自分の経験を踏まえて考えると、彼らに対し心配になることがある。彼らからは「複雑で専門的な内容であるこの業務は、一旦、企業の担当者になってしまうと、そのまま個人に帰属した業務になってしまう」との話を良く聞く。例えば、退職給付会計計算に必要な計算データの作成業務や、退職給付に関する会計処理実務や過去の履歴管理、(企業によっては)退職給付債務の計算業務そのものがこれに該当するだろう。これら業務について、自社内の担当者が一人で抱え込んでしまい他のメンバーの誰も内容の把握ができていないといったケースが多いようである(自社計算ソフトの中身を担当者本人以外は社内の誰も理解していないという企業もある)。また、担当者のノートPCにすべてのデータを入れてしまっているような企業もある。このような企業において、タイミング悪く担当者が突然出社できなくなった場合、決算作業に遅延が生じる、もしくは経営に必要な数値が然るべきタイミングで提示できないといった、企業経営にとって重大な事故に繋がることも懸念される。もちろん、退職給付会計業務に限らず、一般に、業務が担当者個人に依存(属人化)しており、かつ情報(ファイル)の共有化ができていない場合も同様であり、筆者のように顧客と多くの接点を持つ担当者の場合には、会社に届くメールにも留意しておく必要があろう。

各企業においては、数年に一度は、社内の業務プロセスのチェックを実施し、そのリスクの洗い出しを行い、必要があれば業務プロセスの見直しをすることをお勧めしたい。具体的には、複数人で業務内容を把握し相互にチェックし合う仕組みを構築する、もしくはジョブローテーション等の活用により数年で担当者を交替させ、複数人が内容の把握ができる状態にしておく、等への体制に移行しておくことが望ましい姿ではなかろうか。

筆者は、今回の入院を通じ、業務のマニュアル化(※2)や情報(ファイル)の共有化が、業務プロセス上のリスクの低減に非常に有効な手段であることを改めて認識したが、各企業の担当者も同じ考えであろう。担当者一人一人が、業務プロセス上のリスクを意識し必要な行動を起こすこと、それが、企業全体の業務プロセス上のリスク低減に貢献し、最終的には企業の継続性を高めるといった企業価値の向上にも繋がるのではないかと思っている。

(※1) 社用スマートフォンに対するセキュリティー対策は万全となっており、最悪紛失時における対策も施されている。また病室のすぐ近くに、病院の定める携帯電話使用可能区域もあった。
(※2) 個人の専門能力が必要な業務については、スケジュール面の工夫をするなど別のリスク回避方法を検討しておく必要がある。

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市川 貴規
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