中東情勢の緊迫化とデフレ下の中国で起きること
2026年03月11日
米国・イスラエルとイランによる攻撃の応酬が続く中、原油などの価格高騰と世界経済への悪影響が懸念されている。日本への影響について、2026年3月2日付の大和総研レポート「中東情勢緊迫化が日本経済の下振れリスクに」(田村統久、畑中宏仁)では、「2026年4-6月期からWTIが80ドル/バレル(100ドル/バレル)で推移する場合の影響を当社の短期マクロモデルで試算すると、2026年度の実質GDP成長率への影響は▲0.1%pt(▲0.2%pt)、コアCPI上昇率への影響は+0.3%pt(+0.7%pt)である」としている。
中国はイラン産原油を多く輸入している。ただし、中国通関統計でそれを確認することはできない。ほとんどが、第三国を経由して輸入されているためである。データ分析などを手掛けるKpler社によると、2025年に中国はイランの原油輸出量の8割以上を輸入した。中国の原油輸入に占める割合は13%程度、これを含めて事実上の封鎖が行われているホルムズ海峡を通過するのは3割程度とされる。
中国経済への影響が気になるところだが、中国の主要メディアは、この点に関してほとんど報道していない。エコノミストによる対外的なレポート発信も見当たらない。中国経済の明るい部分にスポットライトを当てる「中国経済光明論」の中で、こうした不都合な分析は避けられているのであろうか?
もちろん、中国でもエネルギー価格高騰による物価上昇と実質GDP成長率の押し下げが懸念されるが、デフレ下の中国では、エネルギー価格高騰を最終製品に転嫁するのは難しく、企業業績の悪化が懸念される。
2026年3月5日に、第14期全国人民代表大会(全人代)第4回会議が開幕し、政府成長率目標は2023年から2025年まで3年続いた前年比5.0%前後から2026年は同4.5%~同5.0%に引き下げられた。それでも達成のハードルは高い。4年にわたる不動産不況に改善の兆しはみられない。加えて、2025年夏場までの消費堅調を支えた自動車、家電、デジタル・スマート製品の購入に対する補助金政策の効果は既に一巡し、2025年10月以降はその反動減に苦しんでいる。2026年は需要先食い政策の反動というツケを本格的に払う必要がある。
こうした状況下で中東情勢が緊迫化した。長期化すれば、中国経済への下押し圧力は高まり、政府成長率目標の達成はさらに困難になろう。
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調査本部
主席研究員 齋藤 尚登
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