東京一極集中と成長戦略
2014年01月23日
来る2月の東京都知事選は、争点に「脱原発」を掲げる向きがあり、国政をも左右するとのことで大きく注目されている。そればかりを争点とすることに違和感はあるものの、エネルギーのヘビーユーザーとして、東京が無関係でないことは明らかだ。
次の都知事の大きな仕事としては、オリンピックに向けた準備もある。この先6年間で、様々なインフラ整備(あるいは更新)が必要となり、日本全体の中でも、とくに東京に“投資”が集中する可能性が高い。首都圏に人口が集中し始めて久しいが、オリンピックを契機に、東京都への人口集中に一段と拍車が掛かることが十分考えられる。また、リニア中央新幹線計画なども、それを助長する方向に働くのではないだろうか。
さらに、アベノミクスの成長戦略における大きな柱である国家戦略特区についても、東京が指定される可能性が指摘されている。国家としての競争戦略上、首都・東京に海外のヒトや企業を引き付けることは重要な政策であろう。最近の東京都心は再開発事業があちこちで展開され、都市としての“活気”を感じる。建物は高層化し、交通網は地下化が進み、過密都市が故の技術もいろいろ工夫されている。そこには一種のイノベーションが生まれていると言っても過言ではないかもしれない。2020年の東京の魅力がどれほど高まっているのか、楽しみではある。
とはいえ、東京ばかりが良くなって、それで本当に持続的な成長が実現できるのだろうか?過密化が一層進展する中で、首都直下地震が起きた場合、日本全体が麻痺する事態には陥らないのだろうか?あるいは、東京にも間違いなく訪れる人口減少・高齢化によって、現在大量供給されている高層マンション群に何か問題は起きないのだろうか?
本来ならば、東京への投資加速と同時に、地方の魅力を高め、そこに国内のヒトや企業を引き付けるような努力が不可欠であろう。それは、東京への一極集中を緩和させることと同時に、日本全体の持続的成長に結びつくはずである。しかも、東京にとっての重要な関心事でもあるはずだ。なぜなら、一極集中が進むことで東京都の地方税収が拡大することが予想されるが、その一部は地方へ再分配されることになる。つまり、地方の問題は東京の問題でもあるのだ。地方の問題を他人事ではなく、自分の問題として捉える必要があるのではないか。
いずれにせよ、長い目で見れば東京にのしかかる課題は多い。東京としては、目先だけのことばかりにならず、長期のビジョンに基づいて施策を打っていく必要がある。一都民としても、これから提示され、議論される(はずの)長期ビジョンに大いに興味が湧くところだ。
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