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前回増税時に見る、消費税増税の消費者物価への影響

2013年10月15日

経済調査部 シニアエコノミスト 橋本 政彦

消費税率が2014年4月1日に、現行の5%から8%へと引き上げられることが正式に決定した。消費税率が引き上げられると、物価上昇によって家計の購買力(実質所得)が目減りするため、家計消費を減少させる。増税による経済への影響を考える上では、増税によってどの程度物価が上昇するかというのが重要な論点となる。

一般的には、消費税率が1%引き上げられれば、消費者物価(生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は0.7%程度押し上げられると言われている。これは、消費者物価を構成する品目の一部、たとえば、家賃や医療費、学費などが消費税の課税対象外であり、課税対象となる品目は、ウエイトベースでコアCPIの7割程度となっているからである。仮に、課税品目の全てで消費税率の引き上げ分を100%小売価格に転嫁すると仮定すれば、今度の3%の消費税率の引き上げによって、2%程度消費者物価が押し上げられる計算となる。

しかし、実際に消費税率が引き上げられる際には、全ての品目で、増税分を100%価格転嫁するとは考えづらい。増税分の一部を小売店が負担する場合もあるだろうし、増税のタイミングで、増税分以上の金額の値上げに踏み切る企業もあるとみられる。そこで、1997年4月に行われた前回増税時には、増税分の価格転嫁状況にどのような特徴があったのかを見てみよう(※1)

以下の図表は、増税のタイミングで増税幅(2%pt)以上に値上げが行われた品目、すなわち増税分が100%以上小売価格に転嫁された品目の割合を、10大費目ごとに見たものである。これを見ると、「食料」、「教養娯楽」、「家具・家事用品」では、半数を上回る品目で増税分を小売価格に十分転嫁できていたことが確認できる。特に「食料」、「教養娯楽」では、増税幅を上回る価格転嫁が多くの品目で見られた結果、全体としても増税幅の2%ptを上回る価格上昇となった。

一方、価格転嫁が進まなかったものに注目すると、「住居」、「教育」、「保健医療」が目立つが、これらの費目については、既述したように非課税品目が多く含まれていることが影響している。また、意外なところだと、「被服及び履物」では、増税分が十分価格転嫁された品目の割合は31%とそれほど高くなく、増税前後の物価上昇率の変化も他の費目に比べて小さい。前回増税時に関して見れば、値上げによる需要の急減を危惧して、増税分を小売店が吸収するという行動は、衣料品で特にその傾向が強かったようである。

前回の増税時とは、さまざまな状況が異なるため、2014年の増税に際して、必ずしも前回増税時と同じことが起こるとは限らないが、消費税増税が物価に与える影響は全ての品目において一様ではないとみられる。こうした違いが、個人消費や、小売店の収益に与える影響については注意深く見ていく必要があるだろう。

(※1)ここでは、増税直前の1997年3月時点の消費者物価前年比変化率と、増税後の1997年4月時点の物価変化率の差を、便宜的に消費税による物価の押上げとした。この変化には、増税による影響のみではなく、他の要因による物価変化も含まれているとみられ、ある程度の幅を持ってみる必要がある。

前回増税時における消費増税の消費者物価への価格転嫁状況

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