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中国人が目指す人材とは?

2013年08月13日

“American Idol”“X Factor”“Britain's Got Talent”“The Voice”など、海外で高視聴率を叩きだしてきたオーディション番組の類。勿論、中国でも、少々遅れてブームが到来し、筆者が7月に北京に滞在した間も、例えばCCTVで『中国梦之声』が放送されていた。

 「どこの国でも、才能を“自覚”するバロメーターがズレた人がいるな。。。(笑)」と、たまに笑いながら見ていたが、なんと言っても13億人の国家である。多種多彩なパフォーマンスが見られるだろうと思っていた。しかし、挑戦者の周りで群舞が披露されるという中国らしい演出はあったものの、欧米への憧れを一心に表現する挑戦者達に少々落胆した。

この極みは、子どもに限られたオーディション番組だった。予選段階で、子どもたちに課したのは“英語”での芸の披露である。オーディション番組なので、芸の中身が無二の才能によるものであるかは勿論だが、審査員とのフリートークでの英語対応も審査対象とされていた。中には、帰国子女も多く、彼らが優位になってしまうケースもあったが、押し並べて見て小学生達の英語でのコミュニケーション能力に度肝を抜かれた。子役がちょっと洋画に出演し、英会話をすれば絶賛されるような日本の現状が恥ずかしくなる。

中国は日本のお受験文化以上に、“英才教育”への関心は高い。オリンピックを見ていれば、納得だろうが、三級制度というシステムの中で、才能のある人材を国家の支援でその道のエリートに育て上げてきた。最近ではエリート街道を夢見る親子が、夏休みを利用して北京大学や清華大学を見学しに来るなど、意識醸成に抜かりない。15年後位には、中国語・英語は当たり前のマルチリンガルが多く輩出され、日本人を圧倒するだろう。

ただ、前出のオーディション番組で中国人の審査員が放ったコメントが中国の課題を表現している。「貴方の英語能力ならハーバードでも、イェールでも行ける。けど、スタンフォードには行けないわ。」学校の関係者には誤解をされるかもしれないが、言いたいことはこういうことである。あくまで英語はコミュニケーションの“ツール”である。目指すはそれを利用して何かオリジナリティのあるものを創造することである。良い例は、スタンフォードが輩出する起業家達だろう。ナイキやPayPal、Yahoo!やGoogleの創設者が学んだ場所で有名だ。あのような力を求める段階に来ているということだ。

2012年の中国の大学院生の数は、172万人。ちなみに日本の大学院生の数は、2011年5月時点の統計で、約27万人だった。海外留学へと出国した中国人は、07年比2.8倍の約40万人だったが、一方で07年比6倍の約27万人が帰国している(※1)(※2)。ただ、海外留学して素晴らしい学位を修めてきても、給与が学歴に比例するため、賃金コストに苦しむ企業は採用してくれなかったとのケースを現地でいくつも聞いた。優秀な人材は、最先端の知識を身に付けるために、学業の場に身を置いて、研究し続けるだけになる。中国政府が、先進国に似た製品を低コストで生産し、輸出することを中心とする産業構造からの転換を本気で目指しているなら、このような海外留学経験者を含めたクリエイティブな人材を企業の生産活動の場に引き込み、彼らの成功をサポートし、“エリート像”を多様化する必要があろう。2012年秋から起業支援策などが発表され、地方都市などでは大学生の起業を優遇し、就職難の解消に努めている。しかし、改革が必要な既存企業に於いて人材を活かす志向が根付かなければ、中国企業が衰退し、判で押したようなエリートが流浪する面白味のない国家になってしまうのでは・・・との懸念が残る。

(※1)中国の大学院生、留学生の数字は国家統計局編『2013年中国統計摘要』より
(※2)日本の大学院生の数は文部科学省生涯学習政策局調査企画課『学校基本調査報告書(高等教育機関編)』より

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