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バーゼルⅢの「レバレッジ比率」について考える

2013年08月07日

金融調査部 主任研究員 鈴木 利光

ここ一ヶ月あまり、「レバレッジ比率」は金融関係者にとって大きな関心事となっている。そこで、この機会に、レバレッジ比率の概要について、簡単におさらいしておこうと思う。

レバレッジ比率は、バーゼルⅢ(※1)の一部を成す規制概念である。

バーゼルⅢは、自己資本規制と流動性規制の2部構成となっている。そして、前者の自己資本規制は、次の5つによって構成されている。

自己資本規制構成要素

バーゼルⅢの中で真っ先に思い出される「自己資本比率」(=自己資本/リスク・アセット)は、①から④をさす(本稿執筆時点で、我が国の告示(※2)にて規定されているのは、2013年から適用が開始されている①②のみ)。

⑤のレバレッジ比率は、簡素な、非リスクベースの指標であり、リスクベースの指標である自己資本比率を補完するものである。その趣旨は、銀行部門におけるレバレッジの積み上がりを抑制することにある。

2010年12月に公表されたバーゼルⅢテキストでは、レバレッジ比率の基準の概要として、Tier1資本を非リスクベースのエクスポージャーで除した値が3%以上となるように提案されている(図表参照)。

レバレッジ比率の基準の概要

もっとも、バーゼルⅢテキストでは、レバレッジ比率は、2013年1月から2017年1月までの試行期間において3%の比率をテストし、その試行期間の結果を踏まえ、2018年1月からの「第1の柱」の下での取扱いに移行することを視野に、2017年前半に最終調整をするというスケジュールが提案されている(開示は2015年1月から)。そうした比較的余裕のある対応期間もあってか、金融業界の関心は、2013年1月からの段階的な実施が提案されている自己資本比率規制のほうに集まりがちであったように思う。

そうしたなか、2013年6月、自己資本比率規制への対応に関する議論がひと段落しつつあるところで、バーゼル銀行監督委員会は、レバレッジ比率の改訂案を公表した(コメント期限は2013年9月20日)。

改訂案は、原案となるバーゼルⅢテキストの提案の大枠を維持しながら、分母となるエクスポージャー額の計測方法について、いくつかの変更を提案している。中でも金融業界の関心を惹きつけているのが、レポ取引等の証券金融取引(SFT)の取扱いに関する変更の提案である。

バーゼルⅢテキスト(2010年12月)では、SFTのエクスポージャー額を、会計上のエクスポージャーによることとしていた(バーゼルⅡのネッティング(※3)は認める)。

これに対して、改訂案(2013年6月)では、SFTのエクスポージャー額として、SFTの想定元本(グロスのSFT資産)(※4)とカウンターパーティ・エクスポージャー(貸出資産と借入資産の評価差額)(※5)の双方を考慮することが提案されている。

報道(※6)によると、このような変更案が実現した場合、日欧米の大手銀行は、レポ取引による借入に対し、合わせて少なくとも1,800億ドル相当の資本を上乗せする必要が生じるという(※7)。

こうした影響を回避すべく、銀行がレポ取引によるエクスポージャーの圧縮(デレバレッジ)を模索するであろうことは想像に難くない。それが実際に行われた場合、国債をはじめとするレポ取引の裏付資産(担保)の流動性にも悪影響をもたらすだろう。

この点について、今後、バーゼル銀行監督委員会が提案の見直しを行うかどうかは、金融業界にとって大きな関心事となるだろう。

(※1)国際的に活動する銀行の自己資本・流動性の新たな規制枠組みをいう。
(※2)「銀行法第十四条の二の規定に基づき、銀行がその保有する資産等に照らし自己資本の充実の状況が適当であるかどうかを判断するための基準(平成十八年金融庁告示第十九号)」をいう。
(※3)法的に有効なネッティング契約下であること等一定の条件の下で、リスク・アセットを計上しないことを許容することをいう。
(※4)会計上のネッティングは考慮しないものする。
(※5)0を下回る場合は0とする。
(※6)FT.com“Banks warn new rules threaten ‘repo’market”[2013年7月23日]参照
(※7)改訂案がレポ市場にもたらす影響については、大和総研レポート「複雑すぎるバーゼル規制に再考の流れ」(菅野泰夫)[2013年7月24日]も参照されたい。

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執筆者紹介
金融調査部
主任研究員 鈴木 利光