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2011年株主総会の争点

2011年03月28日

政策調査部 主席研究員 鈴木 裕

今年の株主総会では、役員の報酬や退職慰労金に関する議案がこれまで以上に投資家から厳しいチェックを受けることになると考えられる。

会社役員の報酬に対して投資家がどのように関わるべきかは、企業ガバナンスの中心論点の一つだ。欧州委員会では、株主の権利に関する指令を発し、加盟各国に役員報酬を株主総会の議案とすることを要請しており、制度改正が進んでいる。また、いわゆるリーマンショック以降、米国では金融改革の一環として役員報酬を総会議案とすることが決まり、今年1月以降の株主総会から適用されている。

日本では、以前から報酬の上限改定や退職慰労金について株主総会に諮られており、役員報酬が株主総会の決議の対象になることは当然であると考えられてきた。しかし、欧米、特に米国では報酬決定を経営判断の範疇としており、株主が関与する機会は限られていた。これがオバマ政権下で大きく変わり、報酬関連議案を株主総会に諮るSAY ON PAYが上場会社に義務付けられたのである。注意が必要なのは、株主総会に諮るといっても投票結果が会社を拘束しないNON-BINDIG VOTING(非拘束的決議)であり、報酬に関して株主の意見を参考までに調査するというものに過ぎないということだ。報酬議案に関する非拘束的決議は欧州のいくつかの国々でも採用されているが、このような制度も日本とは異なる仕組みである。

こうした世界的な動きの中で、報酬関連議案は投資家の関心を集めている。これまでは投票の機会すらなかった事項について参考意見にとどまるとはいえ、株主の意向が問われるようになり、報酬関連議案に関して厳しい判断が示されるようになった。米国の総会シーズンは4月から6月であるが、早いところは既に終えている。これまでの結果を見ると、SAY ON PAY議案への賛成が多数というところがほとんどだが、賛成が過半に達しない事例もいくつか見られる。

今後の日本の株主総会では、退職慰労金議案に多くの反対票が生じそうだ。SAY ON PAYにおける報酬関連情報の詳細な開示に比較すると、日本の議案説明は透明性に欠けるように思える。機関投資家向けに議決権行使の助言を行なうコンサルタント会社では、退職慰労金議案が支給額不明なまま議案にされている現状を問題視し、支給額あるいはその算定方法が明確にされない場合には、賛成投票を助言推奨できないという方針を新たに策定している。現状の議案の作り方のままでは、反対投票推奨にならざるを得ない。問題なのは、欧米のSAY ON PAYと異なり日本の退職慰労金議案の決議には拘束力があるということである。否決されれば慰労金の支給はできなくなる。議決権行使コンサルタント会社の推奨に影響を受けやすい海外投資家の保有比率が高い場合には、否決のリスクを避けるために支給額やその算定方法を明瞭に開示することを検討してもいいだろう。

既に退職慰労金制度を廃止した企業も多い。そうした中で、この制度の存続を図ろうとするならば、不明確な報酬制度を維持する企業としてかえって注目を集めることにも成りかねない。

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