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中国の投資家は何故、市場健全化策を素直に好感できないのか

2005年01月27日

経済調査部 主席研究員 齋藤 尚登

04年1月末に国務院が、「資本市場の改革・開放と安定的な発展を促進する9カ条の意見」を発表してから1年が経過する。この間、中国では様々な市場健全化策が発表され、既に実行に移されたものも少なくない。しかし、その一方で株価は低迷し、上海証券取引所総合指数は、1月20日には1204.39ポイントと99年5月以来の安値を更新した。

投資家は何故、健全化策を素直に好感できないのか。例えば、04年12月7日発表の「株式新規公開ブックビルディング試行通知」では、(1)発行価格は、機関投資家を対象としたブックビルディングによって決定する、(2)発行価格PER算出の際に使用する一株利益は、一過性損益控除後純利益と控除前純利益のいずれか低い方を、新規公開後の総株式数で除して求める、などが規定された。(2)については、当たり前だと思われるかもしれない。しかし、これまでは「一過性損益(=利益)を含む純利益÷新株発行前の株式数」で計算されていたため、一株利益が二重の意味で「水増し」され、発行価格PERが低く見せかけられていた経緯がある。つい先日、ブックビルディング通知適用第一号企業の発行価格が決定されたが、マーケットは、従来の制度的欠陥を再確認し、さらには昨年8月末以来途絶えていたIPOの再開を嫌気して(需給悪化懸念)、株価下落でこれに応えたのである。

しかし、相場低迷長期化の主因はもっと根が深いところにある。同じ問いを繰り返すが、投資家は何故、市場健全化策を素直に好感できないのか。それは、株式市場が国有企業改革の出口として機能してきたという歴史的背景から生じる根本的な問題—(1)国家・法人株など非流通株が2/3を占め、構造的な需給悪化要因となっている、(2)支配株主によって上場企業の利益が犠牲にされがちである、(3)財務諸表を含めた情報の正確性・透明性への不信感が強い—といった問題が解決されていないためである。市場の抜本的な健全化には、これらの問題の解決が不可欠であり、特に、(1)の非流通株式の流通株式化の問題は、議論の段階から、マーケットの理解を得られるような明確な方針を提示する時期にきている。少なくとも国家の戦略的重要企業以外では、全株流通に向けたハードルは高くないはずである。この過程では、親会社からの優良資産の注入や地方政府からの補助金受け入れといった赤字3年目の起死回生策で辛うじて生き延びている企業(3年連続の赤字計上は上場廃止基準のひとつ)や、粉飾決算を行うなど上場企業としての意識の低い企業の市場からの秩序ある退場が求められよう。

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