コンサルティング・ビジネスに追い風となるガバナンス・コード第三次改訂

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2026年03月18日

コーポレートガバナンス・コードは、これまでも企業向けコンサルティング(コンサル)・ビジネスに様々な材料を提供してきた。コードが策定された2015年には、2名以上の独立社外取締役を選任すべきとなっていたが、これが2021年改訂でプライム市場上場企業は「3分の1以上」となった。取締役会構成について2018年改訂で「ジェンダーや国際性の面」での多様性確保が求められ、2021年には「職歴、年齢」が多様性の要素に追加された。他社での経営経験のある者を独立社外取締役に加えるべきという要求も加わった。2021年からは取締役会に備わっているスキルの組み合わせを一覧化したスキル・マトリックスの開示が求められている。また、コード策定時から、取締役・監査役向けのトレーニングの実施とその方針の開示も規定されている。こうしたコードの規定を受ける形で、社外取締役の紹介や、役員向け研修の提供などがコンサルティング業者のビジネスとなっていった。

取締役会実効性評価の実施とその結果開示は、コード策定時から規定されている。策定当時、取締役会実効性評価などというものはほとんど行われていなかった。取締役会自身が自己評価してもよいのだが、自画自賛を避けようとするなら、外部の業者を利用することになる。取締役会実効性評価という新たなコンサル・ビジネスをコードは作り出したのである。

資本政策に関する説明はコード策定時から求められていたが、2018年改訂で資本コストの的確な把握が要求されるようになると、資本コスト経営のサポートがコンサルのメニューに加わった。計算方法も利用方法もよくわからない資本コストの的確な把握のためには、外部の知恵を借りるのが近道だ。2023年からの東京証券取引所による「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」の求めは、コンサル需要をさらに増すこととなった。

2021年改訂で人的資本に関する説明をすべきとコードに規定されるようになると、人的資本経営のコンサルが広がった。企業戦略と関連付けた人材戦略は、企業経営に不可欠であろうが、コードはこれを文章化して開示することを求めた。

ESGやサステナビリティに関する取り組みの求めもコード策定時からあったが、改訂を重ねるたびにその厚みは増していった。サステナビリティに関する開示の取り組みは、コードからさらに有価証券報告書開示へと広がっている。サステナビリティ経営は、今や最もありふれたコンサルのメニューの一つだ。

現在、ガバナンス・コードの第三次改訂が検討されている。今回の改訂では、取締役会事務局の機能強化の重要性が強調されている。英国で「カンパニー・セクレタリー」の研修を請け負う団体が、日本のガバナンス・コード改訂の有識者会議発足に先立って、「カンパニー・セクレタリー」をコードに入れ込むよう提案したこともあってか、コード改訂案には「取締役会を支える部署であるいわゆる取締役会事務局(コーポレートセクレタリー等)の機能強化等の取組みを推進することも重要である。」との一文が含められた。今後は、取締役会事務局の機能強化のサポートがコンサル案件として注目されるようになるだろう。

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執筆者紹介

政策調査部

主席研究員 鈴木 裕