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年金保険料未納問題の裏側で・・・

2004年05月18日

リサーチ本部 執行役員 リサーチ担当 兼 政策調査部長 鈴木 準

目下、社会全体で熱い話題となっている公的年金改革は、話が政治家の保険料未納問題という思いもしない方向へ転がり、本格的な論議はなおざりとなっている印象が否めない。もっとも、未納だったことよりも、立法者らですら制度を十分理解していないことが明らかになったことは、ある意味で問題の根深さを如実に表した。仮に制度を一元化したところで、未納は回避できるかも知れないが、公的年金をとりまく不信・無理解・先行き不透明感は解消しないだろう。

ところで、いわゆる三党合意により附則を修正した上で衆院で可決され、本コラム執筆現在、参院で審議中である年金関連法案の中には「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」の改正法案が含まれていることをご存知だろうか。この法案は、衆院の委員会審議でも年金本体(?)と一体的に扱われた。といっても、会議録をみると、年金の話と比べてこちらについて交わされた議論はほんのわずかである。

同法案の内容を一言でいえば、企業に対して定年延長を義務付けるものである。現在の法律上、65歳未満の定年の定めをしている事業主には、定年の引上げなど65歳までの雇用確保を図る「努力義務」があるが、改正法が成立すると2006年度以降、ア)定年の引上げ、イ)継続雇用制度の導入、ウ)定年制の廃止、のいずれかを講じる義務が生じ、違反すると厚生労働大臣の助言・指導、さらには勧告の対象となりうる。雇用を確保すべき年齢は段階的に引き上げられる内容となっており、2013年度に65歳まで引き上げられる。

段階的な雇用延長は、賃金と年金との空白期間を避けるために、既に実施中である厚生年金の1階(定額)部分の支給開始年齢引上げと辻褄が合うように設定されているようである。また、より広く考えると、長期的な労働力減少が確実な下、高齢者雇用を確保することは日本経済にとって重要な政策課題である。意欲と能力のある労働者が、年齢と関係なく活躍できるような経済社会は個々人にとっても望ましい。ただ、現在、わが国の企業には、規模、業種、職種などにかかわりなく、60歳定年制が幅広く定着している。企業は60歳定年を前提に賃金体系や人事政策を構築・運用していると考えられ、一律的な雇用延長が強制されることになれば企業の活力を削ぎかねないし、若年失業への影響も懸念されよう。

既に多くの企業には定年後の再雇用制度等が存在している実態や、改正法には、当面、継続雇用対象者の選別基準を企業が定めることができるなどの経過措置が含まれている点を踏まえると、実際には劇変は生じないと予想される。しかし、いずれにせよ、活力ある高齢化社会の実現のために、個人と企業の双方にとってどういった施策が適切かの幅広い検討が議会でもなされるべきだろう。今後の高齢者雇用のあり方は、年金制度の都合を優先するかのように年金法案の裏側でひっそりと扱われるような問題ではないように思われる。

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鈴木 準

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