子どもが幼いうちは子育てに専念したい世帯にも目配りを
2026年10月26日
政府は2023年12月に「こども未来戦略」を策定し、子育て支援の強化を進めているが、合計特殊出生率(以下、出生率)は下げ止まらず、2025年には1.14と、10年連続で低下した。
筆者は、「被扶養者」(無業または短時間就労等で、公的医療保険において家族の被扶養者となっている女性)の変化が出生率の低下に大きく関係していると考えている。
より正確にいうと、2017年度から2023年度にかけての出生率の低下要因は、統計的には被扶養者の出生率の低下と20~44歳女性に占める被扶養者の割合の低下によってほぼ説明できる(※1)。
このうち、被扶養者の割合が低下したことは、女性が結婚や出産を経ても被保険者として働き続けられるようになったことの表れとして、前向きに評価できる側面もある。一方、少なくとも子どもが幼いうちは子育てに専念することを理想とする女性が、その希望を叶えにくくなっているという課題を示唆する側面もある。
国立社会保障・人口問題研究所「第17回出生動向基本調査」(2025年調査)(2026年9月)によると、18~34歳未婚女性の「理想ライフコース」として「両立コース」(結婚し、子どもを持つが、仕事も続ける)が36.5%で最多である。一方、「再就職コース」(21.8%)と「専業主婦コース」(10.2%)を合わせると、少なくとも子どもが幼いうちは子育てに専念することを理想とする女性は32.0%である。
政府が少子化対策として行ってきた子育て支援策は、共働き世帯に対する両立支援策の比重が大きく、片働き世帯や妻が扶養の範囲内で働く世帯との間には、受けられる支援に大きな差がある。
共働き世帯では、産休・育休期間中も従前所得の5割から8割程度が保障され、職場復帰後は多額の公費が投入された保育所を低額で利用できる。
他方、妻が出産前までに退職して当面子育てに専念する世帯では、産休・育休に該当する給付は受けられず、(「こども誰でも通園制度」を除けば)原則として保育所を利用することもできない。したがって、家計は主に夫1人分の手取り収入と(共働き世帯と給付額が同額の)児童手当で賄うこととなる。
新たに子どもを持った世帯の母は、2017年度までは被扶養者が多数派だったが、2018年度からは被保険者が多数派となっている(※1)。
結婚や出産に関する意思決定には、所得、雇用、住宅事情、価値観など多くの要因が影響するが、親の就業形態による支援の差は、子どもが幼いうちは子育てに専念したいと考える人が、経済的な理由から共働きを選んだり、結婚や出産をためらったりする一因になり得る。
政府は「2030年までに少子化トレンドを反転できなければ、我が国は、こうした人口減少を食い止められなくなり、持続的な経済成長の達成も困難となる」(こども未来戦略、p.1)という認識を示しているが、2030年までに残された時間は少なくなってきた。
「こども未来戦略」は、3つの基本理念の1つに「全てのこども・子育て世帯を切れ目なく支援する」(p.10)を掲げ、親の就業形態にかかわらず支援を行う必要があるとしている。
2030年までに少子化トレンドを反転させるためには、政府は今一度「こども未来戦略」に掲げた理念に立ち返り、「子どもが幼いうちは子育てに専念したい」世帯にも目配りした政策を実行する必要があるのではないか。
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- 執筆者紹介
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金融調査部
主任研究員 是枝 俊悟
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