「寝不足は努力の証し」という思い込み

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2026年10月28日

先日、遅ればせながらApple Watchを購入した。これまでは安価な別のスマートウォッチで歩数などを管理していたが、交換できないプラスチック製のベルトがまた壊れてしまった。心拍数や睡眠時間の測定精度にも不満があったため、今回、思い切ってApple Watchに手を伸ばしたのだ。

Apple Watchには定期券などのアプリ機能があり、これまでのスマートウォッチとは便利さが格段に違うことに感動した。そして何よりも、健康に関するデータを詳しく確認でき、特に「睡眠スコア」を確認できることが気に入った。

睡眠スコアは、睡眠時間の長さ、就寝時刻の一貫性、睡眠中断(覚醒した回数とその合計時間)の3つのデータから算出される。年齢などの影響もあるのか、私は夜中に目覚める回数が多く、早めに就寝してもスコアが伸びない。今回の計測で、睡眠時間だけでなく、眠りの連続性にも課題があることが分かった。

日本では睡眠時間が短いことが、ややもすると自慢話として語られ、健康上の問題として十分に深刻に受け止められていないのではないか。日本人の睡眠時間は諸外国と比べて非常に短い。OECDの時間利用データによれば(※1)、非加盟国も含めた調査対象35カ国の平均が8時間29分であるのに対し、日本は7時間42分(2021年)と最も短い。米国は9時間1分(2024年)、ドイツは8時間32分(2022年)である。厚生労働省の2024年調査(※2)では、日本では睡眠時間が6時間未満の人は男性36.2%、女性38.9%に上る。睡眠不足は日中の眠気や注意力・判断力の低下だけでなく、肥満、高血圧、2型糖尿病、心疾患、脳血管障害、うつ病などのリスク上昇とも関連する。睡眠不足は、単なる疲労の問題ではないのだ。

厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」(※3)は、成人に対し、個人差を踏まえつつ6時間以上を目安に必要な睡眠時間を確保し、食生活や運動、寝室環境などを見直して睡眠による休養感を高めるよう勧めている。睡眠の不調が続く場合には、病気が潜んでいる可能性にも留意が必要だという。

もっとも、分かっていても睡眠時間を延ばすのは簡単ではない。仕事や家事、育児、通勤などで一日は埋まり、最後に削られやすいのが睡眠だからだ。生活の工夫だけでは解決できない面もあるため、寝不足を個人の自己管理だけの問題にしてはならない。職場でも、不要な長時間労働を減らし、十分な休息を取れる働き方を考える必要がある。休むことを怠慢とみなさず、個人にとっては翌日の判断力や生産性を支える投資、企業にとっては人的資本を守る取り組みと捉える発想が大切ではないか。

最近では睡眠を専門とするクリニックも開業するなど、日本人の睡眠に対する意識は徐々に変わりつつあるようだ。私自身も、毎朝の点数に一喜一憂するのではなく、就寝時刻をなるべくそろえ、データの傾向と日中の体調を照らし合わせるようになった。Apple Watchなどのスマートウォッチは一部の機能を除いて医療機器ではないが、見過ごしてきた生活習慣に気づくきっかけにはなる。睡眠を「余った時間に取るもの」ではなく、「先に確保すべき時間」と考えることから始めたい。

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溝端 幹雄
執筆者紹介

政策調査部

主任研究員 溝端 幹雄