2026年10月16日
サマリー
◆公的統計は、経済社会の実態を把握する上で重要な公共財である。しかし近年、回答負担の重さなどを背景に、統計調査全体の回収率の低下が世界的な問題となっており、日本も例外ではない。世帯系調査だけでなく企業系調査でも回収率が低下し、標本の偏りや推計精度の悪化を通じて、統計の信頼性と制度の持続可能性を脅かしている。
◆企業、とりわけ一定規模以上の企業は、複数の基幹統計調査・一般統計調査の対象となり得る。売上高・従業者数・設備投資などの類似項目でも、定義、対象範囲、対象期間、締め切りが異なり、調査ごとに確認・加工する必要がある。負担は専任の統計担当を置きにくい中小企業ほど固定費的に重く、統計だけでなく企業の「レポーティング全体」を見据えれば、削減余地は大きい。
◆負担軽減の第一歩は測定である。日本でも「官民の統計コスト削減」に取り組んだが、その後、同じ枠組みによる政府横断的な継続計測は確認できない。海外では、標準コストモデルや法制度に基づき、行政手続・政府の情報収集に伴う負担の計測が行われている。日本の次期第V期公的統計基本計画では計測を制度に組み込み、「測って減らす」PDCAを回すべきである。
◆デジタル化による負担軽減の効果は、①調査の電子化(オンライン回答)、②調査自体の削減(行政記録・企業データの連携)、③調査の代替(民間・オルタナティブデータの活用)の3段階で整理できる。生成AIは各段階を横断的に後押しする。さらに、企業を、統計を「出す側」から「使う側」へと位置づけ直し、速報化・詳細化や統計データの安全な利活用などの便益を返す設計が鍵となる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
同じカテゴリの最新レポート
-
出産年齢から見るChild Penalty①
就業継続の広がりと先行研究から見える課題
2026年11月06日
-
消費データブック(2026/11/5号)
個社データ・業界統計・JCB消費NOWから消費動向を先取り
2026年11月05日
-
2026年7-9月期GDP(1次速報)予測 ~前期比年率+1.5%を予想~
個人消費は小幅減だった一方、設備投資と輸出が実質GDPを押し上げ
2026年10月30日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本の長期金利、2035年に5%台の可能性
2035年に3.5~4.2%程度で、海外保有拡大で1%pt超の上乗せも
2026年10月16日
-
増える高齢富裕層とその地域分布
高齢富裕層はどこにいるのか、その資産は今後どこへ向かうのか
2026年10月01日
-
金利上昇と「資本コストや株価を意識した経営」
金利上昇による資本コスト上昇は限定的だが引き続き要注視
2026年10月13日
-
預貸率における地域間格差
東京都への一極集中と地域金融機関に期待される対応
2026年10月02日
-
飲食料品の消費減税による消費行動への影響
買い控え・反動増は限定的。外食支援策は実態を見極めた対応を
2026年10月19日
日本の長期金利、2035年に5%台の可能性
2035年に3.5~4.2%程度で、海外保有拡大で1%pt超の上乗せも
2026年10月16日
増える高齢富裕層とその地域分布
高齢富裕層はどこにいるのか、その資産は今後どこへ向かうのか
2026年10月01日
金利上昇と「資本コストや株価を意識した経営」
金利上昇による資本コスト上昇は限定的だが引き続き要注視
2026年10月13日
預貸率における地域間格差
東京都への一極集中と地域金融機関に期待される対応
2026年10月02日
飲食料品の消費減税による消費行動への影響
買い控え・反動増は限定的。外食支援策は実態を見極めた対応を
2026年10月19日

