上場維持の合理性が問われる時代へ
2026年09月14日
近年、上場を廃止する企業が増えている。2026年に東京証券取引所の上場を廃止した企業と年内に廃止を予定している企業は合わせて129社と、3年連続で過去最多となる見通しだ(日本取引所グループウェブサイト「上場廃止銘柄一覧」より集計。原稿執筆時点:9/4)。MBO(経営陣による買収)や投資ファンドによる買収、親子上場の解消など、その背景はさまざまだが、上場を維持する意味が改めて問われているように思う。
上場には、株式市場から資金を調達できるだけでなく、上場企業であること自体が社会的信用力の向上につながるなどのメリットがある。また、優秀な人材の採用や取引先の開拓においても有利に働くとの指摘もある。
しかし、上場企業には情報開示や内部統制、監査対応が求められるほか、投資家との対話やIR活動など、上場維持に伴う負担がある。これらに伴うコストや経営資源の負担は決して小さくなく、年々増している。手元資金が潤沢で当面は大規模な資金調達を必要としない企業にとっては、上場のメリットが従来よりも低下している可能性がある。
上場を維持する合理性が問われる典型例が、親子上場である。近年は親子上場を巡る環境も変化している。たとえば、上場企業が、他の上場企業(取引先など)の子会社となり、親子上場の形態をとるケースでは、「グループ間のシナジー効果」のような、業績にプラスになる材料に関心が集まっていた。ただし、このようなケースでは、同時に親会社と子会社の少数株主との間に利益相反が生じる可能性もある。
こうした問題意識を踏まえ、東京証券取引所は近年、グループ経営や少数株主保護に関する情報開示の充実を求めるとともに、親子上場等に対する投資家の視点を公表するなど、上場企業に対して説明責任の強化を促している。親子上場そのものを否定するというよりも、なぜその形態を維持する必要があるのか、少数株主の利益をどのように保護するのかを明確に説明することが求められているのである。
上場廃止企業の増加は、単に企業数が減っていることを意味するものではない。むしろ、企業が自社にとって最適な資本政策やガバナンスのあり方を改めて見直している結果ともいえるだろう。重要になるのは、「親子上場の是非」を一律に論じることではなく、「上場を維持する合理性」を市場に対して示せるかどうかである。資本コストや株価を意識した経営が求められる時代において、その説明責任は今後ますます重くなっていくのではないだろうか。
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- 執筆者紹介
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金融調査部
主席研究員 中村 昌宏

