対話を通じて実感した社外取締役の役割

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2026年08月28日

上場企業において、社外取締役の選任はすでに一般的なものとなっている。東京証券取引所の集計によれば、2026年7月14日時点で全上場会社の90.2%が2名以上の独立社外取締役を選任している(※1)。体制整備が進む一方で、生命保険協会のアンケート調査では社外取締役の役割について約4割の機関投資家が「不十分であり、改善の余地がある」と回答している(※2)。また、「企業が社外取締役に期待する役割や、その実績と評価について投資家として把握・評価するにあたり、企業側の説明・開示は十分だと考えていますか」という設問に対し「説明・開示が不十分で把握・評価が困難」と回答した機関投資家も約4割存在した(※3)。

先日、ある上場企業の社外取締役と話をする機会があった。その方は、経営陣の監督にとどまらず、社内の実情を理解しようと努め、社員との意見交換や現場の視察などを積極的に行っていた。その企業が将来どうあるべきかを真剣に考え、語る姿が印象的であった。その社外取締役は、数年にわたり若手登用の重要性を社内で訴え続けてきたという。その結果、近年になって人材登用の在り方にも変化が見られるようになったようだ。

社外取締役の役割として、最も重要なのは経営に対する監督機能の発揮である。社内の常識や慣行にとらわれない立場から経営課題を問い直し、経営陣に新たな視点を投げかけることが期待される。社外取締役の意見は、必ずしも直ちに大きな変化として表れないかもしれない。それでも、取締役会などの場での経営陣との議論の中で、同じ論点を繰り返し問いかけることにより、経営陣の意識や組織運営に少しずつ影響を与えることがある。

機関投資家にとって重要なのは、社外取締役の人数や独立性だけではない。どのような問題意識を持ち、どのような議論を行い、その結果として経営判断や組織運営にどのような影響を与えたかが重要であろう。最近は、統合報告書などで、社外取締役のインタビューや対談を掲載する企業も増えている。社外取締役の考え方や企業との関わり方を知るうえで有益な情報発信といえるのではないか。

また、筆者は自身の経験から、機関投資家が社外取締役の役割について理解を深めるには対話が重要であると感じた。三井住友信託銀行の「ガバナンスサーベイ®2025」によれば、社外取締役と株主・投資家との対話を実施している企業は、回答企業の7%にとどまっている(※4)。

企業の持続的な成長のためには、外部の視点を経営に取り込み、組織を変えていく力が欠かせない。社外取締役は、社外の立場から社内の常識を問い直し、時には社員や現場の声を経営に届けることで、組織の変化を促す存在にもなり得る。社外取締役が機関投資家との対話を通じて自らの役割を具体的に伝えることは、機関投資家が投資先企業のガバナンスの実効性を判断するうえで、有益な手がかりとなるのではないか。

(※1)東京証券取引所「東証上場会社における独⽴社外取締役の選任状況及び指名委員会・報酬委員会の設置状況」(2026年7月21日)p.6
(※2)生命保険協会「企業価値向上に向けた取り組みに関するアンケート集計結果一覧(2025年度版) 投資家様向けアンケート」(2026年4月17日)p.5
(※3)前掲脚注2、p.6
(※4)倉持直・宮﨑航一・坪田和樹「ガバナンスサーベイ2025から見るコーポレートガバナンスへの取組み状況」資料版商事法務 No.503(2026年2月)p.28。「ガバナンスサーベイ®2025」の調査期間は2025年7月~8月で、調査回答数は1,714社。「ガバナンスサーベイ®」は三井住友信託銀行の登録商標である。

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太田 珠美
執筆者紹介

金融調査部

主席研究員 太田 珠美