改訂CGコードと一体的である「成長投資ガイダンス」とは

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2026年08月05日

  • 調査本部 フェロー兼エグゼクティブ・サステナビリティ・アドバイザー 塩村 賢史

例年よりも1カ月程度遅れて、7月21日に「経済財政運営と改革の基本方針2026年」(以下、「骨太の方針」)と「日本成長戦略」が閣議決定されました。これらの文書には、2040年度までに戦略17分野へ官民で累計370兆円超を投資し「強い経済」を実現することが強く打ち出されています。その陰に隠れている感がありますが、「日本成長戦略」を金融面で支えるための施策が盛り込まれた「成長投資を促進するための金融戦略 - 資産運用立国のアップグレード -」(※1)に加えて、「コーポレートガバナンス・コード(2026年改訂版)」(※2)(CGコード)や「成長投資ガイダンス」(※3)についても、同日に確定版が公表されています。他にも沢山の文書が一気に公表されていることもあり、情報が多すぎて消化不良を起こしている方も多いのではないかと思います。

それでもCGコードについては、どの上場企業もコーポレートガバナンス報告書を作成する必要があることから関心は高いですが、「成長投資ガイダンス」に関しては、その重要性の割には注目されていないように感じます。「日本成長戦略」では、「成長投資ガイダンス」はCGコードと一体的とされており、中長期的な企業価値向上のための実務指針であることが示されています。CG報告書作成はもちろんのこと、今後の資本・財務戦略を考える上で、必読のガイダンスです。

新聞報道などでは、「成長投資ガイダンス」を「株主還元偏重の是正」と捉えるような見出しが多くみられましたが、それではガイダンスの趣旨を正しく捉えていないように思います。事実、日本企業全体の株主還元性向は、欧米と比べて低い状態が一貫して続いています。日本企業の課題は、自社の成長フェーズにあった成長投資や事業ポートフォリオの見直し、株主還元等の適切な経営資源の配分が柔軟に行えていないことです。

その課題解決のために「成長投資ガイダンス」では、EP(Economic Profit)という指標を企業と投資家双方の共通言語として、中長期的に資本コストを上回るリターンの持続的な創出に向けた経営判断と行動を促すことを目指しています。EPは、あまり馴染みがない指標だと思いますが、EP=投下資本×(ROIC(※4)-WACC(※5))で求められます。いままで、企業と投資家の対話の場面などで、ROEと株主資本コストのスプレッドであるエクイティスプレッドやROICとWACCのスプレッドなどが使われていたと思いますが、EPはその応用・発展形です。つまり、「伊藤レポート1.0」や東証の「資本コストや株価を意識した経営」をベースに、資本コストを上回る成長投資分野に積極的に投資を行うことで、それによる価値創造をEPという「面」で捉えていくということです。

当然、応用問題は基本問題よりも難しく、唯一絶対の解があるものでもありません。まさにEPを共通言語として、企業と投資家が対話を通じて、より良い解を求めていく必要があると考えています。戦略17分野の官民累計370兆円の投資に目を奪われがちではありますが、「成長投資ガイダンス」を踏まえた企業自らの行動変容が生み出す成長投資は、日本の経済成長をボトムアップで高めるものです。「成長投資ガイダンス」に加えて、拙稿「『成長投資ガイダンス』の解釈とその活用法」(2026年6月17日付大和総研レポート)(※6)もご覧いただけましたら幸いです。

(※4)Return On Invested Capital(投下資本利益率)の略

(※5)Weighted Average Cost of Capital(加重平均資本コスト)の略

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塩村 賢史
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フェロー兼エグゼクティブ・サステナビリティ・アドバイザー 塩村 賢史