高市政権の官民投資ロードマップはデジタル重視が鮮明に

RSS

2026年06月29日

「危機管理投資・成長投資」を掲げる高市早苗政権は、かねてより示していた戦略17分野に関して、2040年度までの官民投資のロードマップを策定した。総額は370兆円超に上り、そのうち「AI・半導体」分野への投資は101.6兆円と4分の1以上を占める。

「デジタル・サイバーセキュリティ」(55.4兆円)、「情報通信」(28.8兆円)、「量子」(13.2兆円)など、他のデジタル関連への投資も多額である。一部では重複もありそうだが、AI・半導体と単純に合算すると199兆円となり、総額の半分以上がデジタル分野に注ぎ込まれる形だ。

戦略17分野には「防衛産業」や「港湾ロジスティクス」、「造船」なども含まれていたため、当初はハード面重視の印象も強かった。だが、それらの分野への投資額はそれぞれ5.0兆円、1.2兆円、1.1兆円と控えめである。

こうした点を踏まえると、政府の成長戦略はAIなどのデジタル分野を明確に意識しているといえよう。米国のCHIPS法やEUの欧州半導体法に見られるように、各国・地域もAIや半導体を戦略分野と位置付けて公的な関与を強めている。今回の日本の動きもこうした国際的な潮流に沿ったものだ。

デジタル分野の進展は、特定の産業にとどまらず、経済全体に波及する。OECDの分析によると、AIの活用によって今後10年間の日本の労働生産性は年率0.16~0.82%pt押し上げられる(※1)。普及のスピードによって違いはあるが、0%台半ばと推計される日本の潜在GDP成長率にとって大きなインパクトを持つ数字だ。サイバーセキュリティや情報通信など、関連するデジタル分野を含めると影響はさらに大きくなり得る。

また、デジタル分野に限らないが、とりわけソフトウェアやデータベース、研究開発といった無形資産は外部性が大きく、民間だけでは十分な投資が行われにくい。こうした対象に政府が関与する意義は大きい。

高市政権はデジタル分野の重要性を十分認識しており、そこへの集中的な投資は合理的だ。一方で、その成否は官民連携の実効性と、政策の継続性に大きく左右される。投資規模の大きさ以上に、政策の具体的な実施手法や、民間投資をどのように誘発するかが問われるだろう。

このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。

末吉 孝行
執筆者紹介

経済調査部

経済調査部長 末吉 孝行