傘寿を迎えるトランプ大統領の「傍若無人」が止まらない

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2026年06月03日

3ヵ月前に前回のコラムを執筆した時点(※1)では、米国がイランを攻撃した直後であった。2026年4月上旬以降、停戦状態は続いているものの、イランとの協議は合意に至らず(トランプ大統領が首を縦に振らず)、今回の執筆時点においても、ホルムズ海峡の自由な航行は阻害されたままである。

一方、米国内に目を転じても、政権運営は必ずしも順調とはいえず、この3ヵ月間も支持率の低下に歯止めがかからない。トランプ1.0の時には、就任2年目に入ってから支持率はV字回復を見せたのに対して、トランプ2.0では、6月初め時点で支持率は約4割と最低水準である。彼自身、野党支持者の視線など眼中になかっただろうが、足元では、共和党の岩盤支持層からも徐々にそっぽを向かれ始めている可能性がある。もともと彼の支持層は内向きで、過度な対外的軍事関与を忌避する傾向があり、ガソリン価格の高騰(イラン攻撃前の約1.5倍)をも招いたイラン戦争が政権の追い風になっているとは思えない。

さて、3ヵ月に1度のトランプ大統領の「傍若無人」さの振り返りである。6月14日には傘寿を迎えるトランプ大統領は、今回も様々な話題を提供しているが、引退後を見据えた資産形成や資産保全に余念がない。例えば、2026年1—3月期に3,600~3,700件という大量の証券取引を行ったことが明らかになり、トランプ政権の政策で名前が挙がる米主要企業に関するものが多く含まれるという。歴代大統領は利益相反の懸念や倫理的な観点から慎重に対応してきたが、トランプ大統領は全く気にしていないようだ。また、IRS(米内国歳入庁)などを相手取った訴訟の和解を巡っては、司法省がIRSに対し、トランプ一家の過去の納税申告に対する調査・監査を永久に禁止する条項を盛り込んでいることが明らかになった。さらに、政治的な訴追で苦痛を受けた人々を補償する17.76億ドルの基金を創設することも和解に盛り込まれたが、その補償対象に、大統領選挙結果への不満から2021年の連邦議会襲撃事件に関与したトランプ大統領支持者も含まれるのではと、議会共和党からも批判が上がっている。

トランプ大統領は、自身に批判的な者への報復にも余念がなく、意に沿わない共和党の現職議員に対しては、党内の予備選で対立候補を擁立し、再選の道を断念させている。共和党内の影響力が健在であることを示したが、党内で勝ち残った候補者、すなわちトランプ大統領が支持する候補者が11月の本選挙で勝つかは不透明である。無党派や中道層の支持を得やすい穏健派に代わって、評判の芳しくない極端な候補者であればなおさらだ。また、予備選で敗北したり、引退を決めたりしている議員は、もはや失うものがないだけに、2027年1月の任期満了(※2)までトランプ大統領の意向に逆らうことに躊躇しないだろう。結果的に、トランプ大統領は自分の首を絞める可能性も出てこよう。

今年は建国250年の節目の年であり、様々な企画が準備されている。トランプ大統領の肖像入りの記念パスポートが数量限定で発行されるほか、大統領が描かれた250ドル紙幣の発行計画もあるとされる。米国に限らず、紙幣の顔に選ばれるには、多くの人に認められた実績を持ち、その国を代表する人物であることはいうまでもないだろう。米国で広く使用されている紙幣には、ワシントンやリンカーン、ハミルトン、ジャクソン、グラント、フランクリンなどといった歴代の大統領や政治家が描かれている。もっとも、法律上、紙幣の肖像は故人に限られており、存命中の大統領を描くには新たな立法措置・法改正が必要となる。現在、法案が議会に提出されているようだが、果たしてどれだけの支持が共和党内から集まるだろうか。

(※2)下院議員全員と上院議員の約1/3が2027年1月に任期満了となる。

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近藤 智也
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政策調査部

政策調査部長 近藤 智也