サマリー
◆米雇用環境の先行きを左右する要素として、AIへの関心が高まっている。本稿では、AIによる影響の受けやすさを示す「AIエクスポージャー指標」に加え、AIにより代替されやすいのか、あるいは代替されにくいか(補完的か)を示す「補完度指標」も用いて、AIが雇用に与える影響について分析した。
◆業種別にみると、AIの影響を受けやすい職種は高賃金のホワイトカラー業種に多く、こうした傾向は企業のAI利用状況とも概ね一致する。また、とりわけAIの利用が進んでいる3業種では、雇用者数のうち、特に代替的に作用しやすい職種の比率が高い。
◆もっとも、業種別の傾向に加えて、各業種における雇用者数の規模も考慮して分析すると、AIの高利用業種における雇用者数のうち、特に代替的な職種は民間部門全体の約4%にとどまる。そのため、AI利用が一部の高利用業種に偏るうちは、雇用全体への下押しは限定的となりやすい。他方で、これに低・中利用業種の分(同約7%)も加えると、特に代替的な職種は同約11%と、一定程度の比率を占めている。先行きにおいて低・中利用業種でもAI活用が広がった場合には、雇用全体で見たときの雇用抑制リスクは小さくないといえよう。
◆なお、AIによる雇用代替が実際に進むかは、経済状況にも左右される。AIにより雇用の代替が進むきっかけとしては、企業のコスト高が挙げられる。実際に、パンデミック後には深刻な人手不足等によるコスト高が生じた中で、省力化投資が進んだ。そして、より大幅に雇用代替が進むきっかけとしては、景気悪化が挙げられる。2000年以降の3つの景気後退後には、企業が収益性の確保を優先する中で、テクノロジーによるタスクの置き換えがタスクの創出を上回り、労働需要の抑制が進んだ。
◆足元の米国経済では、関税引き上げやエネルギー価格の上昇など、企業収益を圧迫するコストプッシュ要因が存在している。また、景気自体は底堅さを維持しているものの、物価上昇圧力の持続や金融環境の引き締まりによって、先行きの景気には下押し圧力が生じる可能性がある。企業によるAI活用が広がる中で、収益性確保への要請が強まれば、AIによる雇用代替圧力が一段と高まる可能性には注意を要する。
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