特別委員会に関する機関投資家の議決権行使基準は変わるか

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2026年05月11日

今年、コーポレートガバナンス・コード(以下、コード)が改訂される。改訂案では、コンプライ・オア・エクスプレインの対象となる原則は30個(基本原則+原則)と、現行コードの83個(基本原則+原則+補充原則)から大幅に縮小される見込みである。一方で、コンプライ・オア・エクスプレインの対象ではないものの、ベストプラクティスを含む「解釈指針」が新設され、現行コードの補充原則の多くがそこに移行する。

その一例が、改訂案の原則4-10解釈指針である。これは現行コードの補充原則4-8③に相当し、支配株主を有する会社が一定数以上の独立社外取締役を選任するか、または独立社外取締役を含む独立性の高い者で構成された特別委員会を設置することを求める内容である。しかし改訂案では、特別委員会の設置はコンプライ・オア・エクスプレインの対象外となるため、設置義務も説明義務も形式的にはなくなる。

一見すると、支配株主を有する会社における少数株主保護の取り組みが後退するようにも見える。しかし、実務では事情が異なる。多くの機関投資家の議決権行使基準は、支配株主を有する会社に対して一定数以上の独立社外取締役の選任を求めている。また、一部の投資家は、独立社外取締役が不足する場合の代替措置として、特別委員会の設置を基準に明記している。したがって、形式的なコード上の義務がなくなっても、実務上は特別委員会を置かないことは依然として難しい。

筆者は、今回のコード改訂を受けて、機関投資家の議決権行使基準が改正され、一定数の独立社外取締役の選任を求める方向にシフトすると予想している。補充原則が解釈指針に移行したことで、投資家の参照するものが原則になるのではないか。そうだとすれば、特別委員会はコード上の必須要件ではなくなるため、投資家としては、より明確で比較可能性の高い「独立社外取締役の人数」を基準に据えやすくなる。

ちなみに、コードで市場ごとに設定されている一定数の独立社外取締役を選任せず、特別委員会の設置で対応している会社は、プライム市場で57社、スタンダード市場で19社存在する(2025年7月14日時点)。こうした企業は、今後の機関投資家の議決権行使基準の変更を注視する必要があるだろう。

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神尾 篤史
執筆者紹介

政策調査部

主任研究員 神尾 篤史