「第3次オイルショック」発生リスクへの日本の対応は十分か

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2026年04月08日

2026年2月末に始まった米国とイスラエルによるイラン攻撃を受け、ホルムズ海峡は実質的な封鎖状態にある。長期化すれば、石油備蓄の放出や代替調達といった短期的な調整手段だけでは需要を賄い切れなくなる。中東依存度の高い日本を含むアジア地域を中心に、原油の価格高騰と供給不足によって経済活動は大幅に下押しされるだろう。

こうしたいわゆる「第3次オイルショック」に発展するかどうかは、中東情勢の緊迫がいつまで続くかにかかっている。この点、米国が当初掲げていた「4~6週間」という停戦時期の目安を過ぎても事態は落ち着かず、対イラン交渉が難航していることは気がかりだ。

25年の米国は、高関税政策と世界最大の市場規模を交渉材料に、主要国・地域から対米投資拡大などの確約を引き出した。しかし、通商交渉と軍事交渉は本質的に異なる。イランは紛争の長期化や原油価格の高止まりを通じて、米国から可能な限り有利な条件を引き出そうとするだろう。戦闘が長期化し両国の犠牲が拡大するほど、停戦・終戦へのハードルは高まる。03年3月に始まった米国のイラク戦争は、終結するのに9年近くかかった。仮に第3次オイルショックへと発展すれば、26年度の日本経済はマイナス成長に転じる公算が大きい。

1973年10月に第1次オイルショックが発生した際、日本政府は「石油節約運動」として翌月から74年夏にかけて国民に日曜ドライブの自粛などを呼びかけたほか、74年1月に戦後初の電力使用制限令として大口需要家に電力使用量の15%削減を義務づけた。今回は、タイなどで省エネの取り組みが始まった一方、日本政府は原油・石油製品の安定供給に向けた取り組みを進めつつ、月間5,000億円程度ともいわれる大規模な補助金を投入し、ガソリンなど燃料油価格の抑制を通じて需要を下支えしている。

日本の石油備蓄は2026年3月末時点で234日分(推計値の速報ベース)あり、当面は供給不足が発生しにくいことが背景にある。だが、仮に夏場が近づいても原油輸入の回復が見込めなければ、政府は需要の抑制へと政策の軸足を移さざるを得なくなる。急な方針転換は小売市場などで混乱をもたらし、一部の商品で買いだめが発生したり、価格が高騰したりする可能性がある。石油製品は幅広い財・サービスで利用されているだけに、その影響は24~25年の「令和の米騒動」よりもはるかに大きいだろう。

事態の長期化に備え、石油備蓄を有効に活用するためにも、政府はガソリン補助金の縮小に関する条件やスケジュールなどを早期に示すとともに、家計や企業などに省エネの取り組みを促すべきだ。

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神田 慶司
執筆者紹介

経済調査部

シニアエコノミスト 神田 慶司