第二次トランプ政権による「反武器化基金」創設の衝撃:「三期目」の示唆は本気か
2026年06月05日
トランプ大統領が、憲法上不可能と一般的に考えられている「三期目」を示唆したことは、少なくとも10回以上ある(※1)。直近の事例は、2026年5月20日に行われた、沿岸警備隊士官学校の卒業式でのスピーチである。トランプ大統領はここで、「三期目」はおろか、「四期目」さえ仄めかした(※2)。
つい最近まで、筆者は、こうした一連の示唆に、トランプ大統領の願望が混じっていることは認識しつつも、それが憲法上の制約を踏まえた冗談であると理解していた。
しかし、最近の、あるトランプ政権の動きにより、これが冗談ではなく、本気であることを確信した。その動きとは、政府による「武器化」の標的にされたと主張する人々に補償するための、17億7,600万ドル規模の‘Anti-Weaponization Fund’(反武器化基金)の創設である(※3)。
第二次トランプ政権を貫く一本の筋があるとすれば、それは、行政府が何を行うことが可能か、あるいは許容されるかという境界線を、少しずつ押し広げようとする努力である。その顕著な例が、国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく関税や、議会承認を得ずに行われた軍事行動(ベネズエラ、イラン)である。
「反武器化基金」の創設はその最新事例だが、ここまでの第二次トランプ政権において、少なくとも法の支配、財政統制、行政機関の中立性という観点からは、最大級の制度的衝撃をもたらした出来事である。というのも、国民の「血税」が、例の、2021年1月6日の米連邦議会議事堂襲撃事件で有罪判決を受けた人々に渡る可能性が濃厚となっているのである。
経緯を簡潔に説明すると、「反武器化基金」は、トランプ大統領が内国歳入庁(IRS)に対して2026年1月に起こした100億ドル規模の訴訟(第一次政権中に機密扱いの納税申告書を報道機関に漏洩したことを受けて)の和解の一部により創設された。基金の出所は、‘Judgment Fund’(判決基金)、すなわち米国政府に対する判決・和解金支払いのための基金であり、議会による個別歳出への承認が不要な納税者資金である。
民主党議員はこぞって、これをトランプ大統領の支持者に納税者資金を流し込むことを目的とした‘Slush Fund’(裏金基金)であると非難し、法的な制約を検討している(※4)。
「反武器化基金」の創設は、行政府がどこまで許されるのかを試す、新たなテストの一つである。ただし、その衝撃度は、「三期目」の示唆が本気であることを確信させるのに十二分なものである。
ここでは、「三期目」にまつわる憲法上の解釈を紹介することは割愛するが、一つ確実なことは、憲法上の明文だけでは議論の余地がある、ということである(※5)。法的に争点になり得る以上、第二次トランプ政権がそれを試すことは大いにあり得る。
(※1)‘All the Times Trump Has Joked About a 3rd Term’(Newsweek、2026/5/21)
(※2)‘Speech: Donald Trump Delivers the Commencement Address at the US Coast Guard Academy - May 20, 2026’(Roll Call、2026/5/20)
(※3)‘Justice Department Announces Anti-Weaponization Fund’(U.S. Department of Justice、2026/5/18)
(※4)‘Democrats move to shut down Trump's $1.8B "weaponization" fund’(Axios、2026/5/20)
(※5)‘How Trump Could Snatch a Third Term — Despite the 22nd Amendment’(POLITICO、2025/1/31)
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ニューヨークリサーチセンター
主任研究員(NY駐在) 鈴木 利光

