中東危機が露呈したASEAN5エネルギー供給構造の差

初期の耐性が高かったのは、マレーシアとタイ

RSS

2026年06月04日

サマリー

◆ASEANは、世界でも有数の石油化学製品の生産拠点である。タイやシンガポールからは日本にポリエチレンを輸出している。中東危機に伴う石油化学製品の供給不足は、日本へ直接的な影響を与えるだけでなく、ASEANに進出している日系企業のサプライチェーンに影響を及ぼすリスクがある。

◆ASEAN地域横断で、ナフサ不足による影響を測るための統計データは、現在のところ取得が困難である。そこで、①国としての石油供給体制と代替エネルギーの有無(国軸)、②上流と下流の一貫性(企業軸)といった2つの軸で見ると、ナフサ不足によるサプライチェーンへの打撃を初期の段階で緩和できていたのが、エタン資源の豊富なマレーシア、そしてタイの一部であったことが分かる。他方、インドネシア、ベトナム、フィリピンではエタン等のナフサ代替資源が乏しい上、上流権益にアクセスできる中流~下流の石油化学会社が限定的であることが、現地サプライチェーンのボトルネックとなっている可能性がある。

◆ただし、エタンはナフサ不足の万能薬ではない。タイやマレーシアへの進出企業は、エタンによる代替能力の恩恵を受けつつ、ナフサ由来でしか得ることができない誘導品に関しては、在庫調整を試みているほか、代替供給先を模索しているのが現状だ。ナフサ不足の影響は、インドネシアやベトナム、フィリピンで大きいが、タイやマレーシアでも時差を伴って表れやすいだろう。マレーシアの調査では、ナフサ等の原料不足を企業努力で凌ぐタイムリミットとして6月末頃と回答する声が多く、早期の緊張緩和が求められる。

このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。

執筆者のおすすめレポート

同じカテゴリの最新レポート