企業価値向上に「効く」非財務指標とは
2026年04月22日
人的資本への投資効果は、最終的には売上や利益などの財務数値に姿を変えて表れると言われている。筆者はクライアント企業に対して長くご支援をしているが、人的資本の取り組みの効果には時差があることを実感している。一方で、企業の成長期待にはどのような視点があるだろうか。現状の業績・成果を維持する盤石な基盤や強みがあることや、さらなる飛躍への種まき・潜在力を感じること等があげられるだろう。このような成長期待への判断軸の一つに、非財務情報・非財務指標が含まれると考える。人的資本に係る非財務情報は多岐にわたるが、財務数値や企業価値にどのように関係・影響するのかは、投資家も注視している。
多くの企業が財務数値・企業価値への影響度の高い非財務指標を模索し、試行錯誤を重ねている。クライアント企業も、他社の開示情報を分析したり、関連セミナーを受講したりしたものの、結果的には多くの企業が類似指標を使用していたと聞く。一般的には、離職率・休暇取得率・1人当たり研修費用・エンゲージメントスコアなどがあげられ、開示資料でも目に触れることは多い。一方で、検討を進めるほど、自社にとっての最適解が見えにくくなる面もある。
人的資本経営の本質は、人材投資を通じて価値創出力を高め、将来的な財務数値につながる成果を積み上げることにある。まずは起点となる有効な成果と非財務指標(活動指標)を設定する。シンプルなモデルを例に考えてみよう。利益率は高く・売上高の成長率が限定的な、受注型企業があるとする。売上高が伸びれば利益額も増加し、成長期待・株価上昇につながることが考えられる。
このモデル企業に、成果とする受注件数の達成に向けて、『提案件数増加』(量的活動指標)を設定してみる。ところが、成果とする受注につながらないなら、『受注率向上』(質的活動指標)等に変更してみる。この指標変更に伴い、日々の活動視点も変化するだろう。具体的には、受注確度の精度向上、見込顧客に対するニーズヒアリング時間の増加、訴求力ある提案書の作成、最適なキーマンへの接触などが想定される。
成果を設定し、その達成のための活動を促す非財務指標を検討する。適切な活動指標により、従業員の日々の意識・行動も変容していく。これらが中期経営計画などのフェーズ毎に可視化・定量化して、経営戦略実現に向けたつながりの中で管理・説明ができると良いだろう。企業の開示資料では、関連指標が個別に記載のみされているケースも見受けられる。企業の価値創造ストーリーに基づき、自社らしい人的資本の成果・指標・活動のつながりが見えることで、経営戦略・価値創造の実現への期待感が生まれ、投資判断を後押しするチャンスとなるだろう。
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マネジメントコンサルティング部
主任コンサルタント 柳澤 大貴

