テキサス州のアンチESG法に対する違憲判決 ~政治と司法の温度差~
2026年04月15日
これまで米国では、化石燃料関連企業が地域経済を支えている州(多くは共和党支持層が強い州)が中心となって、気候変動問題に取り組む金融機関に対する圧力を強めてきた。それらの州の中で特に注目されてきたのは、米国の中でも経済規模の大きいテキサス州である。石油や天然ガスは同州のGDPの約3分の1を占め、州予算の10%超を支えているという(※1)。同州は2021年、エネルギー会社をボイコットする企業(エネルギー会社に対する投融資や取引などを行わない企業で、金融機関を含む)を、公的年金の運用や公共調達から排除する制度を導入した。
2024年、米国の企業団体であるAmerican Sustainable Business Councilは、同制度が合衆国憲法修正第1条および修正第14条違反であるとして、この制度を主導するグレン・ヘガー氏(テキサス州会計監査官)とケン・パクストン氏(テキサス州司法長官)に対する訴訟を起こした。テキサス州西部地区連邦地方裁判所は、2026年2月に当該制度を違憲と判断し、執行の永久差し止めを命令した。なお、本判決を出したアラン・オルブライト判事は2018年に共和党のトランプ大統領に任命された判事である。
合衆国憲法修正第1条は、連邦議会に対し、宗教の自由や言論の自由の制限、平和的に集会する権利の侵害にあたるような法律の制定を禁じるものである。修正第14条は、州にもこうした内容を適用するものだ。違憲と判断された大きなポイントは、テキサス州の制度の「エネルギー会社をボイコットする」の定義の広さにある。例えば化石燃料がもたらすリスクについて語ること、化石燃料への依存に反対すること、同じ考えを持つ組織と連携することなども対象になり得てしまう。加えて、企業側に具体的にどのような行為が禁止されているかを知る合理的な機会が提供されていないこと、州による恣意的な執行につながっていることも、違憲判断につながったようである。
被告側(テキサス州側)は第5巡回区連邦控訴裁判所に控訴しており、本訴訟の決着がついたわけではない。また州が制度を変更し、合衆国憲法に反しない形にする(訴訟の論点をなくす)対応も考えられる。ただし、2025年に今回の制度が違憲と指摘される可能性を回避すべく、テキサス州上院から制度変更が提案されたものの、下院で廃案となった経緯もあり(※2)、実現のハードルは高そうだ。
米国では気候変動問題が政治的な争点になり、民主党による推進と、共和党による否定が繰り返されている。今回の裁判所の判決は、この問題に対する過度な政治的介入に司法が歯止めをかけ、企業や投資家の自主的な判断を尊重するものと言えるだろう。今後、エネルギー企業をボイコットする企業を排除する制度を取り入れている他州においても同様の訴訟が広がるか、注目される。
(※2)Texas Policy Research “Commentary: Federal Court Strikes Down Texas Anti-ESG Law SB 13” (2026年2月5日)より。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。

- 執筆者紹介
-
金融調査部
主席研究員 太田 珠美

