トランプ大統領は都合の良いピエロなのか?

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2026年05月29日

  • 経済調査部 シニアエコノミスト 佐藤 光

2025年の米国第二次トランプ政権発足以降、世界はトランプ大統領の動向に日々振り回され続けている。朝令暮改もいとわないようなトランプ氏の一貫性に欠ける言動を受けて、世間の多くの人々にとっては、先行きが見通しにくい状況を余儀なくされているといえる。

しかし、これまでの経済面の実績だけを見ると、結果は総じて悪くないようにみえる。米国の関税政策等を受けたIMFなどの当初の懸念に対して、2025年の世界の経済成長率はそれほど悪化しなかった。米国株価や債券価格、あるいは為替の米ドルについても、一時的に安くなる場面があっても底割れには至らず、比較的堅調に推移している。また、企業収益もマクロ的には堅調だ。経済面での心配は、米国自らが関わる中東情勢緊迫化に伴うインフレの再加速ぐらいといえる。

トランプ派の人々の基本原則である「アメリカファースト」は、最近では「自分ファースト」の様相を強めているように見受けられ、トランプ氏を筆頭に、時にはルールを曲げてでも自己の欲望のままに行動するような場面が目立っている。ただし、いわゆるアニマルスピリットは、かつてケインズ博士が指摘したように経済を活性化する原動力でもある。株式市場の格言では「強気相場は懐疑の中で育つ」とされるが、欲望に忠実な一部の人だけで盛り上がるような状況は、外部からは危ういものにみえても、意外に成長し、持続性があるのかもしれない。

最も目立ち、かつ絶大な権力を持つトランプ氏がピエロの如く型破りに振る舞うことで、世間の多くの人々が警戒心を失わない状況が保たれる結果として、トランプ氏を信じて(あるいは理性や思考を半ば放棄して)踊れる少数の人々が利益を享受し続ける構図なのだろうか。直近の各種世論調査でトランプ大統領の支持率は低迷が伝えられているが、それでも3~4割は確保している。踊れる人々にとって非常に都合の良い存在だとすると、トランプ氏は打倒されることなく権力者として君臨し続けることが可能だろう。そして、経済成長という観点だけから見れば、3~4割が踊り、6~7割が慎重な状況が、一種の均衡状態といえるのかもしれない。

これまで述べたような構図は、外部の干渉を受けにくい権威主義的な大国においても当てはまる可能性がある。トップ個人が型破りというよりは制度的により強権であるという点に差はあるにせよ、少数の人々が強く支持し、多数は常に一歩引いている(が、打倒するほどのまとまりはない)状況は似ているのではないか。そしてこの構図こそが、権威主義国についてささやかれてきた経済的な破綻をこれまで回避してきた一因なのかもしれない。このような少数派の夢と権力の強い結びつきは、いつまで続き、どのような結末となるのか、全く見通せない。

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佐藤 光
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