サマリー
◆日本経済の当面の主な下振れリスクは中東情勢だが、それが落ち着いたとしても、低い生産性や労働力の減少、経済安全保障リスクといった中長期的な課題に取り組む必要がある。当社の中期マクロモデルに基づくと、現在の経済構造が維持される中では、2040年度にかけて年率+1%を下回る成長率にとどまる。労働力の減少や企業・家計部門の貯蓄超過が続く一方、公債等残高対GDP比は2030年代後半に上昇基調に転じる見込みで、持続的な成長を実現するシナリオとはいいにくい。
◆そこで3つの代替シナリオを作成すると、民間の前向きな行動変容、供給力の強化、財政健全化、を一体的に推進するシナリオが最も望ましい。物価が安定した環境の下で潜在成長率が年率+1%台前半で安定的に推移し、日本経済の持続的成長が見込まれる。こうした経済構造への転換を官民で目指すべきだ。投資拡大余地が比較的大きい「医療・福祉」「情報通信」などへの支援強化のほか、高市政権の看板政策である危機管理投資・成長投資では費用対効果を重視し、基礎的財政収支(プライマリーバランス)に目配りしつつ、メリハリをつけて推進することが求められる。
◆企業の明確な行動変容が見られなかった要因の1つに、投資意欲の高い企業の参入(開業・起業)が少なく、産業の新陳代謝が停滞したことが挙げられる。2024年度の開業率は1981年度以降の最低を更新した。また、上場企業の粗利益率に見る日米の収益力格差は、主に社齢30年超の成熟企業で見られる。スタートアップへの支援強化などに加え、こうした企業のリスクテイクを後押しする取り組みも重要だ。
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