新NISAがもたらす投資の定着と、次世代へ繋がる資産形成
2026年04月10日
2024年1月にスタートした新NISA(少額投資非課税制度)は、2025年末時点で口座数が2,825万口座、累計買付額が71兆円を突破した(※1)。政府が2022年に掲げた「5年間で56兆円」の目標を前倒しで達成し、「貯蓄から投資へ」のシフトは着実に進展している。直近2年間で旧制度10年間分に匹敵する約36兆円が流入し、大規模な個人マネーが日本の資本市場において存在感を高めている。
資金の定着はデータにも表れている。2025年夏の金融庁の有識者会議では、NISAの継続保有率が高水準にあり、市況急変時においても投資家の行動は総じて冷静であったと報告された。その背景の一つには、新NISAを機に増加した投資初心者の堅実なスタンスがあると考えられる。2026年3月公表のアンケート(※2)によれば、2020年以降に投資を始めた初心者の66.3%が「足もと経済的に無理がなく、今後投資を続ける上で心理的に無理がない」と回答した。こうした初心者層に浸透している身の丈に合った投資姿勢も、市場全体の冷静さを支える一因となっているかもしれない。
では、実際にどのような層がこうした堅実な投資をしているのか。内閣府資料(※3)によれば、特に二人以上の勤労者世帯では30代から50代の現役世代が、単身世帯でも30歳未満から40代の中高所得層を中心に、有価証券の購入額が多くなっている。アンケートでも投資初心者は30代の割合が最も高いとされている。投資資金の確保は「預貯金からの振り替え」が最も多く、ある程度余裕のある層が無理のない範囲で資金を振り替えることで、「貯蓄から投資へ」の動きが裏付けられている。
このように現役世代に投資が根付く中、その長期投資の流れを次世代へ繋ぐ動きも本格化している。令和8年度改正税法では、2027年から「つみたて投資枠」の対象年齢の下限を撤廃し、0歳から利用可能にすることが盛り込まれた。現実的な資金の出し手として想定されるのは、親世代よりも祖父母世代であると思われる。新NISAを通じて投資の有効性を実感した親世代が橋渡し役となり、祖父母からの資金を孫の口座へ振り向ける「世代を超えた資産移転」が進む可能性があるだろう。
世代を超えて個人の資金が市場に定着することは、資本市場の厚みを増す上で大きな意味を持つ。家計の安定的な資産形成が、企業のイノベーションを支える成長資金となる好循環が生まれれば、日本経済全体にとってもプラスになる。制度の進化を追い風に、多くの人々が資本市場の主役となり、資産形成に取り組むことが期待される。
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金融調査部
金融調査部長 鳥毛 拓馬

