外為法の審査制度によって買収を防ぐことはできるのか

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2026年03月23日

高市政権が今国会で成立を目指している法案の一つに、外国為替及び外国貿易法(外為法)の改正法案がある。同法案には、外国投資家に対して、一定の業種(指定業種)に対する投資について日本政府に事前に届け出ることを求め、審査の対象とする制度(対内直接投資審査制度)の見直しや、「日本版CFIUS(※1)」の創設が盛り込まれる見込みである。

本制度において、外国投資家による日本企業の買収も審査対象に含まれ得る。近年、上場企業の間で株式の持ち合い解消が進んでいる中で、同意なき買収が増加していることから、本制度によって買収を防ぐことができるのではないか、と期待する経営者もいるようだ。では、本制度によって買収を防ぐことはできるのだろうか。

まず注意する必要があるのは、本制度の対象となるのが、買収対象企業が指定業種を営んでおり、買収者が外国投資家である場合に限られることである。買収対象企業が指定業種を営んでいなかったり、買収者が国内の企業やファンドであったりする場合は、そもそも審査対象にならない。

また、本制度は外国投資家による投資を禁止するものではなく、審査の対象とするものなので、審査の結果、日本政府が安全保障等の観点から問題ないと判断すれば、買収は認められる。

加えて、外国投資家の側には、一定の措置をとることで買収が承認されやすくなるよう工夫する余地もある。投資を認めると日本の安全保障上のリスクが懸念される場合に、外国投資家が、例えば投資対象事業に関与しないことを誓約することなどを通じてリスクを軽減することにより、承認を得られやすくするといった対応も可能である。

この他、日本政府は対内直接投資を大幅に増やす方針を掲げており、上記も踏まえると、外国投資家による買収が承認されない可能性は高くないだろう。

とはいっても、これまで審査を通らなかったケースはないわけではない。2008年に英領ケイマン籍のファンドが電力会社の株式を20%まで取得しようとしたケースでは、その電力会社の経営や電気の安定供給等に影響を及ぼす可能性があるとして承認されなかった。

審査の結果、承認しないという結論が正式に出されたのはこれまでこの1件しかない模様だが、表には出てこなくても実質的に承認されなかったケースはこれ以外にも存在する可能性がある。というのは、外国投資家が事前届出を行った後に、日本政府とコミュニケーションをとる中で届出を取り下げるというケースがあり、この件数が2024年度は363件にも上っている。この中には、外国投資家が承認を受けることが難しいと判断して届出を取り下げたというケースも存在している可能性がある。

以上を踏まえると、一般論としては、外為法により外国投資家による買収を防ぐことができる可能性は低いが、ケースによっては買収が認められないこともあるだろう。

(※1)対米外国投資委員会(Committee on Foreign Investment in the United States)。外国企業による対米投資を審査する、米国の省庁横断的組織。

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執筆者紹介

金融調査部

主任研究員 金本 悠希